「かわいすぎて、怖さが伝わらない」――。クマへの注意喚起のため秋田県が作成した広報チラシに、物言いがついた。だが、専門家からは「いたずらに恐怖心をあおっても、かえって啓発効果が薄れる」との指摘も聞かれる。

 チラシは、絵心のある県職員が描いた。つぶらな瞳のクマが茂みのかげから顔をのぞかせ、こちらをうかがっている。その脇には「クマに注意」と大きな文字。人里に誘引したり、山で遭遇したりしないための対処法をイラスト付きで表記したほか、クマの生態や過去の事故事例なども紹介している。

 3万5千枚を印刷して市町村や県の施設などに配布した。

 このチラシについて県議の一人が今月3日の県議会で、「かわいすぎて怖さが伝わらないのではないか」と、イラストの変更を求めた。

 NPO法人日本ツキノワグマ研究所の米田一彦理事長は「ポスターには危険地帯に人々が侵入するのを防ぐ脅迫型と、住民説明型があって、秋田のチラシは後者。説明内容に意識を向けさせるため、あえてクマの姿(怖さ)を薄くしたと理解している」「特に子どもには、恐怖心をあおると注意してほしいことが伝わりにくい」と話す。

 出没が多い隣の岩手県のチラシも、愛くるしいイラストだが、問題視する声はないという。鳥獣対策の担当者は「子グマはかわいいからといって近づいてはいけない、という反面教師的な意味も込めている」。

 佐竹敬久知事は「恐怖を感じるような画像を使うべきだ」などと答弁したが、その後の記者会見では「あまりどぎついのは動物愛護に反する。ケース・バイ・ケース、TPOに応じてやっていく必要がある」と述べた。

 自然保護課の千葉崇課長は「クマに襲われると重大なけがにつながる。その怖さもしっかり伝わるよう取り組んでいきたい」としている。(阿部浩明)

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