女性初のエベレスト登頂者で登山家の故・田部井淳子さんが力を注ぎ、全国からの寄付で続く「東北の高校生の富士登山」(田部井淳子基金主催、朝日新聞社など後援)が開催され、宮城、福島、山形から参加した高校生37人全員が24日、富士山頂に立った。

 プロジェクトは福島県三春町出身の田部井さんが「東日本大震災からの復興を担う東北の子どもたちに、日本一の富士山に登ることで自信をつけてほしい」と震災の翌年からはじまった。

 24日午前2時半過ぎ、静岡県側の富士宮ルート6合目(約2490メートル)を出発。西からの強風に苦しめられたものの、日の出や雲海の景色を楽しみながら高度を上げ、午前9時に気温約5度の標高3776メートル、剣ケ峰に全員が立った。登山ガイドや国際山岳医、エベレスト登頂経験のあるタレントのなすびさんら22人のスタッフがサポートした。

 福島県立橘高2年の二階堂菜摘さんは初めての富士山挑戦。「みんなで励まし合って、登頂することができました。うれしい。雲海がすばらしかったです」と頂上で笑顔を見せた。

 下山中に激しい雨に降られる場面もあったが、高校生は12時間歩き、午後2時に6合目の山小屋に無事に到着した。福島県立磐城桜が丘高2年の大森拓弥さんは、本が好きで学校では文芸部員だ。「スクワットを100回して臨みました。自分にも登れました。良い思い出になりました」

 田部井さんは生前、高校生との富士登山に力を注ぎ、がんが進行して立つことも厳しい状況になった2016年7月にも、病院から富士山に向かって標高3千メートルまで登り、「一歩一歩足を進めれば、必ずいつかは頂に立てる」と高校生を励ました。その年の10月に死去、生涯最後の登山が高校生との富士山だった。その後は、長男の進也さん(45)がプロジェクトを率い、全国からの寄付で毎夏に続いている。(斎藤健一郎)

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