ハイキングコースから崖の下に転落し、やぶの中で2昼夜、動けなかった70代女性を見つけたのは「神奈川県警のエース」だった。枕カバーのにおいを頼りに斜面を駆け下りたジャーマンシェパードの警察犬ジゲン号(オス、5歳)。その活躍がなければ命の危険があったという。

 6月29日朝、逗子署にスマホが届けられた。逗子市のハイキングコースに落ちていたのを、コースを歩いていた女性が見つけた。まもなく持ち主の親族からスマホに電話が入り、同市で一人暮らしをしていた70代女性が前日から帰宅していないことがわかった。

 署員や住民、別の警察犬が周辺を捜索。28日夜にコース近くを傘をさして歩く姿が防犯カメラに映っていたが、本人の所在はわからなかった。

 翌30日午前9時10分。ジゲン号が招集され、捜索を始めた。崖下の谷からのにおいをつかみ、斜面を下りた。同38分、やぶの中で体育座りをした女性を見つけた。

 女性は「あら、ワンちゃん」と驚いたという。消防隊員に背負われ、ロープで斜面を約100メートル上がり、救急搬送。すり傷はあったが、命に別条はなかった。

 現場近くでラジオ体操をしていた男性(79)によると、この斜面は傾きがきつく、物を落としても拾えず、ロープがなければ上がることもできない。

 女性は自宅から約2キロのハイキングコースで何らかの原因で転落した。時おり雨がふり、両足の靴が脱げ、2昼夜を過ごしたとみられる。

 県警には直轄15頭、民間の嘱託16頭の警察犬が所属している。直轄犬は昨年477回出動し、23件で行方不明者を見つけた。うち6件がジゲン号だった。

 署は24日、ジゲン号に首に巻く冷却リングを贈り、鑑識課警察犬係の2人を表彰する。(村上潤治)

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