日本三大祭りの一つ、天神祭の宵宮と本宮が今年も24、25日にある。6月に解説本「大阪天満宮と天神祭」を出版した大阪天満宮文化研究所の高島幸次所長(75)は、1千年以上続いてきた祭りのキーワードを「変革」とする。

 天神祭は平安時代に疫病退散を願って始まったとされ、江戸時代に大きく発展。神霊を乗せた船が大川を渡る25日の「船渡御(ふなとぎょ)」がハイライトで、水上での神事や奉納花火を見に例年約130万人が集まる。

 高島さんは「伝統を保ちつつ、時代に合わせて変革を繰り返してきた。その変化が発展の原動力になった」と説く。

 その一例がみこしだ。菅原道真公の神霊を乗せるみこしは、明治時代に担ぐ「鳳神輿(おおとりみこし)」から、ひいて動かす「御鳳輦(ごほうれん)」に変わった。明治天皇が大阪行幸の際に乗っていたことがきっかけという。

 高島さんは「しずしずと進む『静』の御鳳輦が列に加わったことで、威勢よく担ぐ『動』の鳳神輿との対比が生まれ、祭りの行列がより華やいだ」と評する。

 また、船上で神事をするようになったのは昭和になってから。地盤沈下などにより船が航路上の橋をくぐれなくなったためで、これで神事を川岸などから見物できるようになり、人気に拍車がかかったという。

 近年でも、女性が担ぐ「ギャルみこし」など、祭りのすそ野は広がり続けている。

 全国的には、祭りは担い手不足などから存続に苦慮するところも多い。同様に1千年以上の歴史があった岩手県奥州市の「黒石寺蘇民祭」は、今年で幕を下ろした。

 「忠実に伝統を守ろうとしても、現代では物理的に難しいものもある。中心の神事が不変であれば、祭りの周辺は変えてもいいのでは」と高島さん。天神祭について「新しいものを受け入れ、変化を恐れない大阪のまちの文化が息づいている。歴史を知り、各地のお祭りの存続や活性化に生かしてもらえたら」と話す。

 解説本は228ページ、2200円(税込み)。全国の書店で購入できる。(近藤咲子)

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