新型コロナウイルスの感染が拡大している。「第11波」と言えそうな状況だが、問題は感染者が増えるだけではない。季節柄、熱中症や手足口病を併発することも。見分けにくいケースもあるといい、注意が必要だ。どう対処すればいいのか。(宮畑譲)

日傘を差しながらマスクを着ける人ら=18日、東京・銀座で

◆似た症状、見分けにくい場合も

 「部屋を閉め切ってエアコンを効かせるなど、暑さ対策と感染症対策は矛盾する。7月上旬以降、新型コロナと熱中症の合併例が増えた」  7月に入り、新型コロナと熱中症、手足口病の「三重併発」をした20代の女性を診察したという「いとう王子神谷内科外科クリニック」(東京都北区)の伊藤博道院長がこう話す。  女性は点滴や入院は必要なかったが、伊藤氏は「倦怠(けんたい)感や頭痛など、新型コロナと熱中症の症状は見分けにくい時がある。患者、医療機関とも、どちらかと思い込まずに検査、診断することが大切だ。熱中症の疑いがある時は早めの対処が望ましい」と注意を促す。

◆新型コロナ感染者は10週連続増加

 新型コロナの感染は5月以降、拡大を続けている。  厚生労働省によると、全国の定点医療機関当たりの直近1週間(7月8~14日)の患者報告数は11.18人で、10週続けて増えている。特に7月に入ってから拡大の勢いが増している。5~6月末までは2人台から5人台にじわりと増えていたが、7月の2週で8人台、10人超となった。この傾向は東京都内でも同じだ。  厚労省の担当者は「昨年と増加の状況は似ている。正確に予想するのは難しいが、お盆明けにさらに増え、ピークを迎える可能性もある」と予測する。

◆主流の変異株「KP.3」は感染力が強い

 現在、主流となっている変異株「KP.3」はこれまでの免疫を回避し、感染力も強いとされる。喉の痛みや高熱も特徴という。  厚労省のデータでは、直近1週間は昨年同期より患者報告数が多く、首都圏で在宅医療を手がける木村知医師は「感染力が強く、過去にかかっていても感染した人がいる。発表されている数字は定点医療機関のもので、潜在的な患者はもっといるはず。夏休みのレジャーで人の接触機会も増える。お盆の後、どれだけ感染者が増えるか心配だ」と口にする。  一方で、手のひらや口の中などに発疹ができる「手足口病」もはやっている。都内の定点医療機関当たりの直近1週間の患者報告数は16.39人。5週連続で警報基準を超えた。感染の中心は乳幼児だが、大人が感染、発症すると症状が重くなるケースもある。

◆食事が取れなくなれば衰弱、回復に時間

 「新型コロナと他の感染症に一緒に感染する可能性はある。手足口病になると、口の発疹が痛くて子どもは食事が取れなくなる。衰弱が強く、回復に時間がかかることも考えられる」  こう警告を発するのは、インターパーク倉持呼吸器内科(宇都宮市)の倉持仁院長。さらに、溶血性レンサ球菌(溶連菌)にも注意が必要だという。  複数の感染症に同時にかからなくても、発症後は体が弱り脱水症状に陥りやすく、逆に熱中症の後は免疫力が低下し、感染症になりやすいと言える。  感染が大幅に拡大すれば、医療機関への負荷が増し、基礎疾患のある人や高齢者へのリスクが高まることは過去が物語る通りだ。

◆「エアコンをかけても適度に換気を」

 倉持氏は、エアコンを効かせる際も適度に換気し、大人数が集まる場を避けるといった日常の基本的な対策の重要性とともに、国や自治体も準備を怠らないよう訴える。「医療逼迫(ひっぱく)は突然やってくる。新型コロナは感染症法上の位置づけが2類相当から5類になり、病床も以前のようには管理していない。治療薬も十分行き渡っていない。重症者を治療できないといった、過去と同じ状況を起こしてはならない」 

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