岩手県内の民家でネコが繁殖して80匹を超え、十分な世話ができなくなるケースがあった。「多頭飼育崩壊」で、不妊手術や譲渡先探しなどをしている保護団体によると、県内でもこうしたケースは後を絶たない。団体は「こうなる前に相談を」と呼びかけている。

 山間にあるこの家の60歳代の住人は、2011年、東日本大震災後に帰郷、間もなく家にいついた野良ネコを1匹飼い始めた。大半はそのネコが子どもを産み、さらにその子たちが交配してここまで増えてしまったという。

 数年前に管内の保健所に相談したが、自力で対応するように言われたという。「あまり保健所を頼ると殺処分されると思い、それ以来、相談しなかった」と話す。

 住人が就労支援施設に、えさ代に困っていることなどの実情を打ち明けたことから、施設から釜石市の保護猫ハウス「アンドゥ」に連絡があり、6月下旬から対応に乗り出した。アンドゥは地元や近隣の保健所と協力し、18日までに80匹を捕獲した。民家からネコの骨が見つかるなどすでに死んだネコもいた。

 捕獲したネコは、獣医師の協力で順次不妊手術をしている。16日には41匹を施術した。費用は民間団体から助成を受ける予定だ。捕獲後に出産したり、妊娠していたりしたネコもいた。

 アンドゥでは、ワクチン接種や健康診断などをしたうえで、幼いネコなど20匹は預かって譲渡先を探し、残りは民家に戻し、えさの支援をしている。住人は「どこに相談していいかわからなかった。本当に申し訳ない」とアンドゥを運営する鈴子真佐美さんらに何度も頭を下げた。

 鈴子さんによると、多頭飼育の発覚は絶えず、年間200匹以上不妊手術をしているが、これほどの数は初めてという。

 「保護した人が安易に保健所に駆け込むと業務を圧迫する」と話す一方「我々を含め相談はしてほしい。保護した人が自分で飼い主を見つける手助けができる」と呼びかける。そのうえで「こういう事態を未然に防ぐため啓蒙(けいもう)活動や保健所と連携した早めの情報把握が大切」と話す。アンドゥの連絡先は0193・22・1897。(東野真和)

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