海上自衛隊のヘリコプター2機の事故は日本の防衛力強化の不安要素となる。事故当時に展開していた対潜水艦戦訓練は、中国の東・南シナ海での海洋進出を意識して練度を高めている最中だ。台湾有事を念頭に日米などの枠組みで能力を強化する領域でもある。

墜落した2機の哨戒ヘリ「SH60K」は護衛艦に搭載して飛行し周辺海域にいる艦船や潜水艦を探知・攻撃できる。対潜水艦爆弾やミサイルの搭載が可能で海上の戦闘が起きた場合に重要な役割を果たす。

ヘリから探知のための「ソナー」と呼ばれる音波を収集する装置を海中に投入して情報収集する。海中深くにいる潜水艦が発する微弱な音波や磁気を探知するのは高度な技術が必要になる。

防衛省・自衛隊は近年、対潜水艦戦訓練を強化している。中国軍の活動が活発な南シナ海まで護衛艦を展開し、海自の潜水艦を他国のものと見立てて探知するなどの訓練をしている。今月7日には南シナ海で日米豪比で対潜水艦戦訓練を開いたばかりだ。

中国は潜水艦技術を向上させており、保有数は米国に近接する。世界の軍事力を分析する米グローバル・ファイヤーパワーによると、2024年のデータで中国の保有数が61隻で米国は64隻だった。北朝鮮は35隻保有する。日本は23隻だ。

中国は潜水艦から出る音を極力静かにして相手から見つかりにくくなる技術も向上させている。

台湾有事の際も潜水艦は重要な役割を果たすと見込まれ、自衛隊は米軍と有事を念頭に対潜水艦戦訓練を展開する。自衛隊が潜水艦の位置を探知して米軍に情報を伝え、米艦艇が対潜ミサイルで対応するなどの連携が想定できる。

米戦略国際問題研究所「CSIS」など日米のシンクタンクが23年に公表した台湾有事のシュミレーションで、中国の潜水艦などの攻撃により米空母が撃墜されるという結果も出た。

自衛隊でヘリの墜落事故が相次いでいる。23年4月には沖縄県・宮古島沖で陸上自衛隊のヘリ「UH60JA」が墜落した。22年末にまとめた国家安全保障戦略などに基づく防衛力の強化で訓練の数や内容も拡充している。

木原稔防衛相は21日、防衛省内で記者団に「2機が衝突した可能性も含め、墜落した原因を究明していく」と述べた。事故原因が究明できなければ日米などの多国間協力にも影響を及ぼすことになる。

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