記者会見する原告の江口大和氏(左から2人目)と弁護団=18日、東京・霞が関の司法記者クラブで
◆「あなたの言ってる黙秘権って何なんですか」
訴訟では、取り調べの録音録画データを弁護側が証拠請求し、地裁の勧告を受けて国側が提出した。逮捕翌日に否認から黙秘に転じた江口氏に川村政史検事が「あなたの言ってる黙秘権って何なんですか、全然理解できない」「お子ちゃま発想」などと話す取り調べ映像の一部が、13分間にわたり法廷で再生された。弁護側は映像を動画サイトで公開し、話題となった。 貝阿彌(かいあみ)亮裁判長は判決理由で、検事の発言は「ことさらに侮辱的、揶揄(やゆ)する表現を使い、弁護士能力や一般的な資質に問題があると繰り返し指摘し、人格を不当に非難」したと認定。「非難を繰り返して供述させようとしたと評価せざるを得ず、黙秘権保障の趣旨に反する」と結論付けた。 訴訟で国側は「反省を促し、真実を供述するよう説得する目的だった」と主張したが、貝阿彌裁判長は「発言の内容からそう読み取るのは困難。仮にそうでも、人格を不当に非難することを正当化する理由にならない」と退けた。江口氏が黙秘の意思を伝えた後も取り調べを続けたことには、違法性はないとした。東京地裁
◆黙秘から56時間続いた取り調べ、違法性否定に「納得できない」
判決後の記者会見で江口氏は「黙秘権行使をばかにし、供述を得ようとする発言は許されないと判断されたことは良かった」とする一方、黙秘の意思を伝えてから56時間続いた取り調べの違法性が否定され「納得していない」と述べ、控訴する意向を示した。 法務省は「判決内容を検討し適切に対処する」とコメントした。 江口氏は2016年に横浜市内での死亡事故を巡り、車の所有者の刑事責任を避けるため、運転の男にうその供述を依頼したとして18年に逮捕、起訴された。昨年9月に執行猶予付き有罪判決が確定し、弁護士資格を失った。(中山岳) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。