旧優生保護法のもとで障害などを理由に不妊手術を強制された人たちが国に賠償を求めた裁判で、最高裁判所大法廷は7月3日、「旧優生保護法は憲法に違反していた」として、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。

これを受けて15日、東京に住む原告の北三郎さん(仮名・81)が、裁判の結果を報告するため仙台市内にある父親の墓を訪れました。

北さんは子どものころに問題行動を起こしたとして施設に入れられて、14歳の時に手術を受けさせられました。

その後、結婚した妻にもおよそ40年にわたって手術のことを打ち明けられず、妻が亡くなる直前「隠していて悪かった」と伝えたということです。

同じ手術を受けた人たちが裁判を起こしたことから、6年前に提訴し、被害を訴え続けてきました。

北さんは墓に丁寧に水をかけ、花と線香を手向けると、深くおじぎをしながら手を合わせました。

そして「つらかった。ありがとうございます」と涙ながらに声を絞り出し、何度も頭を下げていました。

北さんは「親が手術を受けさせたと思い、ずっと恨んできましたが、その責任は国にあったとわかった。親に『勝ったよ』と報告できてうれしいです。ほかに手術を受けた人たちも力を振り絞って声を上げてほしいと思います」と話していました。

不妊手術を受けた人の中にはいまも声を上げられない人が多くいるとみられ、手術を受けた可能性がある人などを対象にした無料の電話相談会が16日に全国一斉に行われます。

北さんの弁護をしてきた関哉直人弁護士も一緒に訪れ、「本人が被害を認識しておらず、家族だけが知っているケースもたくさんあると思う。国が悪く本人や家族は悪くないという判決が出たので、安心して相談してほしい」と話していました。

“声を上げられない人も多くいる”

国の5年前の推計では、旧優生保護法に基づく不妊手術を受けた人のうち1万2000人が存命だとされていますが、手術を受けた人に支給される一時金を申請した人はことし5月末の時点で1300人にとどまっていて、差別を恐れて声を上げられない人も多くいるとみられています。

16日に開かれる無料の電話相談会は、こうした状況を受けたもので、最高裁判所が国に賠償を命じる判決を出してからは初めてとなります。

相談会の対象は、旧優生保護法による手術を受けた可能性がある人やその家族、知人、またはそうした情報を持っている福祉関係者や医療関係者などです。

全国の弁護士が無料で相談に応じ、一時金の請求方法などさまざまな悩みについて対応にあたるということです。

手術を受けた証拠や確証がない人も相談できます。

相談会は16日の午前10時から午後4時までで、
電話番号は0570-07-0016です。

電話での相談が難しい人を対象に、FAXでの相談も同じ時間帯に受け付けます。
FAX番号は022-224-3530です。

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