アスベスト(石綿)による健康被害で死亡した兵庫県三木市の男性の遺族が、労災認定の関連文書を労働基準監督署に不当に廃棄されたとして国に約300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が11日、神戸地裁であった。野上あや裁判長は「文書の誤廃棄は違法」として、国に約1万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 訴状によると、男性は建設現場で石綿を吸って中皮腫を発症し、2003年に死亡。08年に加古川労基署が労災認定したが、署がその後関連文書を誤廃棄したため、建材メーカーとの訴訟で遺族がメーカーの責任を立証できないなどの損害を受けた、と主張していた。

 判決は、厚生労働省が05年にアスベスト関連文書の保存を求める通達などを出していたのに、加古川署長が保存期間を変更しなかったため原告の利益が侵害されたと認定した。

 「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」とし、署長の職務上の義務に背くもので違法だと結論づけた。

 判決後の会見で原告弁護団の谷真介弁護士は「アスベスト関連文書の重要性だけでなく、公文書が適切に保管されることに対する国民の権利性も認められたと言える」。

 原告の男性は「訴えが認められうれしい。父も労災記録も戻ってこないが、二度と同じようなことにならないよう改めて対策をしてほしい」と書面でコメントした。

 判決を受け、厚労省は「判決を精査し適切に対応したい。誤廃棄が発生したことは遺憾。近日中に都道府県労働局に対して石綿関連文書の適正管理について指示するなどし、適切な管理を徹底する」としている。(宮坂奈津)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。