池袋暴走事故で妻子を亡くした松永拓也さん(37)が10日、法務省矯正局の「心情等伝達制度」の職員研修で講演した。制度を利用し、暴走事故の男性受刑者(93)に思いを伝えた経験を話し、制度を担う刑務官らに「被害者・遺族の思いは十人十色。暴言などを除いて、できればありのままを伝えてほしい」と語った。

 研修には、全国の刑務所や少年院などで同制度の聴取を担当する刑務官や法務教官計139人が参加。被害者・遺族から思いを聞いて文書をつくる実習をしたあと、松永さんの講演を聞いた。

 心情等伝達制度では、希望する被害者側から刑務所職員らが心情を聞き取り、書面にまとめて受刑者に読み聞かせる。希望があれば後日、受刑者の反応や発言などを被害者側に書面で伝える。

 松永さんは今年3月に制度に申し込み、受刑者の担当職員に自身の思いを伝えた。後日、書面で回答を受け取り、それをきっかけに5月、受刑者と面会した。「加害者からの回答をみて真摯(しんし)に答えてくれていると思った。この制度は被害者の救いになり得るし、加害者の反省も促せる。より多くの方に知って、利用してほしい」と話した。

 法務省によると、制度が始まった昨年12月から今年5月末までに申し込みは59件あった。うち50件は被害者・遺族から聴取しており、42件が加害者へ伝達済みという。(御船紗子)

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