カジノを含む統合型リゾート(IR)の建設予定地だった山下ふ頭(横浜市中区)の再開発について話し合う市の検討委員会委員長の寺島実郎・日本総合研究所会長が辞意を示していることがわかった。検討委員会では学識者に加えて地元関係団体を交えた議論が始まっており、こうした議論の進め方をめぐって市側と考え方の違いがあったとみられる。

 複数の関係者への取材でわかった。12日に予定されている4回目の会合で、寺島氏の辞任が報告され、新たな委員長が決まる見通しだという。

 検討委員会は再開発を通したまちづくりの方向性などについて議論する目的で、市長の付属機関として設置された。

地元関係団体の参加に懸念も

 委員には当初、寺島氏や建築家の隈研吾氏ら学識者12人が選ばれ、昨年8月に1回目の会合が開かれた。

 この場で、市側はふ頭や地元企業の関係6団体の代表に委員会に参加してもらう考えを示した。6団体の中には「ハマのドン」と呼ばれる藤木幸夫・横浜港ハーバーリゾート協会(YHR)会長が会長を務める横浜港振興協会も含まれていた。

 ただ、山下ふ頭の再開発をめぐる事業者提案募集にはYHRが参加していることから、委員からは「(検討委が)利害調整組織のようになる」と懸念する声も出ていた。

 一方、藤木氏はIR誘致に反対して前回の市長選で山中竹春市長を支援した経緯もある。結局、昨年11月にあった2回目の会合で、地域関係団体の代表を加えることが市側から発表された。

寺島氏は3回目の会合を欠席

 寺島氏は2回目の会合後の記者会見で「団体の利害のためか、広域的なことを考えているのか。(各団体には)整合性のあるプランを出してほしい」などと指摘し、藤木氏らが加わった3回目の会合は欠席していた。

 関係者によると、寺島氏は昨年末までに市へ辞意を伝えていたという。他の業務で多忙なことに加え、世界の港湾の動向を踏まえたまちづくりのあり方について議論することを求めていたにもかかわらず、地元関係団体が参加することで、検討委員会が本来市や市議会が担うべき利害調整の場になってしまうことへの懸念があったという。

 12日の4回目の会合では、国内外の開発事例についての説明などが予定されている。(堅島敢太郎)

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