東日本から西日本にかけての連日の猛暑を受けて日本救急医学会は8日オンライン記者会見を開き、熱中症の予防や治療に関する緊急提言を発表した。体の奥の体温「深部体温」が40度以上で重い意識障害がある場合は、重症度の中でも最重症群に当たるとする新分類を公表。医療者には何らかの方法で体を即座に冷却する「アクティブ・クーリング」の重要性を強調した。一般の人にはなるべく水分摂取させ、エアコンのある部屋で休ませるなどの応急対応を促した。
学会の横堀将司・日本医大教授は「既に災害を超えた状況。暑さに慣れきっていない猛暑日の中に身を置く時期が一番危ない」と不要不急の外出を避けるよう注意喚起した。「すでに夏に入っている印象がある。準備不足なのではないかと思った」と緊急会見を設定したという。
提言では、1〜3度に分類された熱中症重症度の中でも、深部体温が40度以上で意思疎通が取れない患者は最重症群に当たると指摘。体に水分をふきつけ扇風機などで気化熱を奪う方法や、冷たい水のプールに入れるなどのアクティブ・クーリングが必要だとした。医療機関や救急車内で行うことが有効だとして「家庭では無理に水風呂に入れたりせず、救急車を呼んでほしい」と述べた。
さらに乳幼児や高齢者、持病を持つ人は脱水を招く可能性もあるとして、特に注意が必要だとした。独居や寝たきりの人は周囲からの声かけなど、社会的に孤立させないよう強調した。
夜間は水分をこまめに取りにくいとして、寝る前の水分摂取やエアコンの意識的な使用が重要だとした。横堀教授は「子どもは不機嫌になるなど、普段と様子が違うのも症状の一つ。高齢者は顔色や汗をかいているかも参考にしてほしい」と呼びかけている。
医療機関でのアクティブ・クーリングの講習会や訓練の実施が適切な熱中症治療につながると指摘した一方、医療機関側の金銭的な負担なども大きいとの課題も示した。
学会は今後、最重症群の新設を盛り込んだ「熱中症診療ガイドライン2024」の発行を予定している。〔共同〕
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