小林製薬が製造した紅麹(こうじ)原料を含む機能性表示食品の問題で、消費者庁は19日、制度の在り方を巡る専門家検討会の初会合を開いた。信頼性の確保に向けた制度の改善策について議論。検討会の意見を踏まえ、政府は5月末をめどに方向性を取りまとめる。

「因果関係が特定されていない場合も含めて、どのように健康被害の情報を収集するのか検討すべきだ」「不純物の混入など異常検知のシステムがなかったのではないか」。オンラインで開いた初会合で、参加者からはこうした指摘が相次いだ。

検討会は消費者安全調査委員会で委員長を務める中川丈久神戸大大学院教授を座長に、医療関係者ら約10人で構成する。原則公開で今後、週1、2回のペースで開催。消費者団体や事業者側などからの意見も集める。

議論のテーマは大きく3つある。第1が製造販売過程における安全性の確保だ。機能性表示食品は法的には一般の食品と同様に扱われ、国による製造時の管理基準はあるものの、医薬品のように義務ではなく任意となっている。

消費者庁は18日、機能性表示食品の届け出がある約7000点を対象にした一斉点検で、計35製品の計147件について健康被害の報告があったと明らかにした。直ちに対応が必要な製品はなかったが、製品との因果関係などについて確認を進めている。

第2が健康被害情報の報告ルールだ。制度は健康被害に関して「発生および拡大の恐れがある場合は消費者庁へ速やかに報告する」と指針に明記している。ただ、小林製薬では医師による最初の症例報告から消費者庁への報告まで2カ月超を要した。報告は義務付けられておらず、義務化の是非などが話し合われるとみられる。

第3が消費者への情報提供の仕方だ。機能性表示食品は消費者庁のデータベースで、事業者が示す安全性や機能性などの情報が一般公開されているが、届け出をしたまま倒産や休廃業した事業者が複数存在することも判明。信頼性の問題が生じている。

検討会の開催に先立ち、自見英子消費者相は記者会見で「透明性のある議論を期待したい。信頼に足る制度に再びしていくことが大事だ」と強調した。

機能性表示食品は2015年に運用が始まった。富士経済(東京・中央)によると、23年の市場規模は前年比19%増の6865億円(推計)で、26年に7770億円に膨らむ見通し。国が安全性や機能性を個別に審査して許可する特定保健用食品(トクホ)と比べて研究開発などのコストが安く、20年に市場規模でトクホを逆転した。

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