北海道旭川市で2021年3月、いじめを受けていた中学2年広瀬爽彩(さあや)さん(当時14)が凍死体で発見された問題で、市教委の第三者委員会が22年9月に作成した原本を思わせる黒塗りのない「調査報告書」を市民団体がネット上に公開したことを受け、市教委は市民団体の刑事訴追に向けて警察と調整に入った。
- 旭川いじめ再調査委 尾木直樹委員長らの記者会見での主なやりとり
広瀬さんのいじめ問題は、再調査委が6月30日に調査結果を公表したが、概要にとどめ、再調査書の提出は見送った。直前に流出問題が起き、市の情報管理体制を信頼できなくなったためだ。
記者会見で尾木直樹委員長は「漏洩(ろうえい)事件。こんな流出の仕方をすれば再調査、調査委員会そのものが機能しなくなる」とネットに公開した市民団体を厳しく非難した。
黒塗りのない「調査報告書」は、一枚一枚を写真撮影したものを、市民団体が24日午後2時ごろ、運営するサイト上で公開。各所にアンダーラインや手書きの挿入メモがあり、第三者委が答申前に、遺族と話し合いながら文書表現や黒塗り箇所を話し合った「たたき台」と思われる。
市教委が26日夜、市民団体に削除を求めて削除された。だが、文書(画像)はすでにダウンロードされたり、ネット上で転載され続けたりする可能性がある。
遺族側弁護団は、市教委に「本物」と思わせて市民団体への削除要請や記事抹消手続きなどを余儀なくさせたことは偽計業務妨害にあたるとし市教委に告訴するよう求めた。
黒塗りない流出、ほかにも
黒塗りのない「調査報告書」は昨年9月末ごろから出回っていたと見られ、旭川市議2人が入手や閲覧をしたと発言していた。市議以外にも流出しており、このうちの1人は「マスキングを外した報告書を入手した」として一部内容に触れ、「マスコミは黒塗りされた事実を追求せず、実態とかけ離れた報道を繰り返した」と雑誌(24年5月号)に書いた。
別の1人はネットで公開された「調査報告書」と同じものを持っていた。「個人情報は守るべきだが、これを口実に無関係な部分まで黒塗りにして真相究明を遮断するのはいかがなものか」と市教委などの対応に不信感を募らせていた。
遺族側弁護団の石田達也弁護士は「爽彩さんに対する予断、偏見、誤った先入観を抱かせる恐れがあり、ご遺族が受けたショックと苦痛は計り知れない」とした上で、「今回のような違法行為が繰り返されれば、情報漏洩を恐れて誰も調査に協力できなくなる。重大事態調査が機能不全に陥れば、いじめに苦しむ子どもたちの命を危険にさらす結果を招くことになる」と危機感を募らせていた。(奈良山雅俊)
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