福島県内では先週、あちこちで桜が満開になった。イチエフ(福島第1原発)の桜は事故後、タンク設置や廃炉作業のためにかなり伐採されたが、それでも免震重要棟につながるメイン道路の両側の桜並木は残っていて、見事に咲いた。散り始めの時期もきれいだった。その場所は、防護服や全面マスクなど装備がいらない場所で、普通の格好で作業員が歩いている。

作業員らが福島第1原発に向かう国道6号沿いの桜も一斉に咲いた

 県内には桜の有名な場所がたくさんある。イチエフで一緒に働く同僚に「三春の滝桜を見たか」と聞かれ、週末に行くことにした。梅、桜、桃が一斉に咲き、三つの春がいっぺんに来るという三春町。ちょうど満開でよく晴れた日だった。  朝から行ったのに、滝桜の前の道が1キロぐらい渋滞しているのには驚いた。風に揺れる満開の桜の花も素晴らしかったが、樹齢1000年の幹の太さに圧倒された。そして町のあちこちに、この滝桜の子どもの桜が植えられていて、町中でも山でも桜が咲き、楽しませてくれた。イチエフの作業は朝早いから、ライトアップされる夜桜まで見られなかったが、来年は見たい。  イチエフに戻ってきて3年がたつ。作業はまだまだあるから、この先しばらく家族と離れての生活になる。とはいえ、いつまでいられるかは被ばく線量の問題がある。イチエフは「ほとんどが作業着だけでいいですよ。安全ですよ」とアピールされているけど、場所によっては線量が高く、人海戦術が行われている。それなのに、2号機の原子炉建屋脇が普通の作業着でいい「グリーンゾーン」になったと聞いたときは驚いた。2号機はもちろん、1号機や3号機の高線量の場所がすぐ近くにある。  娘も大学に進み、息子も専門職を目指して勉強していると嫁から聞いて驚いた。子どもたちが成人するまであと数年。しっかり働かなきゃ。子どもたちが独立したら、夫婦2人で福島に移り住み、桜を一緒に見られたらなぁ。(聞き手・片山夏子) 

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