旧優生保護法下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は3日、判決を言い渡す。平成まで半世紀近く続いた強制不妊手術への国の責任についてどのような統一判断を示すかが注目される。
遺伝性の疾患や知的障害、精神障害がある人に本人の同意なく不妊手術を行うことを認めた旧法は1948年に議員立法で制定された。
96年に母体保護法に改正されるまで、不妊手術を受けた人は全国で約2万5千人に上る。そのうち約1万6千人は本人の同意を得ていなかったとされる。2018年に宮城県の60代女性が国に損害賠償を求めて仙台地裁に提訴したのをきっかけに各地で訴訟が起きた。
今回はこのうち大阪、東京、札幌、神戸、仙台の5訴訟について判決が言い渡される。主な争点は旧法の違憲性と原告に賠償を求める権利が認められるかの2点だ。
旧法の違憲性についてはいずれの高裁判決も「憲法違反だ」と認めた。上告審弁論でも原告側は「個人の尊重などを定めた憲法に反する」と主張した。国は違憲かどうか見解を示していない。
もう一つの争点の原告に損害賠償請求権が認められるかは高裁段階では判断が割れた。
旧民法では不法行為から20年たつと損害賠償請求権がなくなる除斥期間という考え方が判例で確立している。原告らの手術は1950〜70年代に行われており、国は原告の賠償請求権はすでに消滅しているとの立場だ。
2023年6月の仙台高裁判決は国の主張を認めて賠償責任を認めなかったが、残りの4訴訟の高裁判決は除斥期間の適用は「著しく正義・公平に反する」として国に賠償を命じた。
上告審弁論では「単なる時の経過で免責されてよいはずがない」としてすべての被害者に一律で補償を求める原告側に対し、国側は除斥期間の例外を広く認めてしまうと、どこまでも過去にさかのぼって訴訟が起こせるため「法的安定性への影響は計り知れない」として原則通りに除斥期間を適用するべきだと主張している。
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