能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市で、発災直後から炊き出しを続けてきた地元の料理人や農家、漆器店員らが1日夜、新たな飲食店「芽吹」をプレオープンさせた。「炊き出しで紡がれた絆で街を元気に」。営業再開を諦めた居酒屋を修繕しながら地元食材を使った料理を提供し、8月のグランドオープンを見据える。
「めちゃめちゃうまい」。プレオープンに招待された客の一人、能登町の漁師、中田洋助さん(37)があつあつのハモに舌鼓を打った。炊き出しチーム「輪島セントラルキッチン」代表の池端隼也さん(44)とは旧知の仲で、輪島市で続けられてきた炊き出しに自分でとったブリも提供した。
池端さんは輪島市のフレンチレストラン「ラトリエ・ドゥ・ノト」のシェフとして能登の食材で料理の腕をふるってきた。昨年の大みそかまで営業を続け、1月2日の仕事始めを控えた元日の初詣の帰りに被災した。
店は全壊。あるのは冷蔵庫に詰まったたくさんの食材だった。「とにかく食事を」。近所の飲食店と食材を持ち寄りカセットこんろで、ずんどういっぱいのあたたかいスープを作り、近くの避難所に身を寄せる800人に配った。
炊き出しには地元料理人のほか、さまざまな職種の人が集まり、一つのチームとなっていった。手先がかじかむ寒さが続く中、もくもくと白い湯気が漂う。においにつられ、拠点をおいた神社近くの長屋には長蛇の列ができた。
メンバーが避難所も回り、食事を必要とする人数を把握した。夜は人数分の食事を届け、また翌朝から料理をする日々を繰り返した。涙を流してお礼を言ってくれた人もいたという。
発災から3カ月が過ぎると避難所の数が次第に減った。メンバーそれぞれの店は再開のめども立たず、収入もない。「炊き出しをきっかけに生まれた絆で頑張りたい」。料理人らの生活再建と復興を願い、新たな挑戦を決めた池端さんは「輪島の町に復興の『芽吹き』を。熱源となって周りの人を笑顔にしたい」と話した。〔共同〕
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