弁護士資格のない男女に自分の名義を使わせ、詐欺被害金返金手続きの法律事務をさせたとして、元自民党衆院議員で弁護士の今野智博容疑者(48)が弁護士法違反(非弁提携)容疑で警視庁に逮捕された事件で、今野容疑者の「共同受任先」の弁護士も、無資格者に名義を貸して法律事務をさせた疑いがあることが、捜査関係者らへの取材で分かった。

◆着手金を支払ったのに弁護士と直接やりとりする機会なし

 共同受任先は神奈川県弁護士会所属の鈴木健氏。警視庁捜査2課は、鈴木氏の行為も同法違反に当たるか慎重に調べている。  鈴木氏に依頼した詐欺被害者らによると、鈴木氏は複数の広告サイトで「詐欺被害の返金は弁護士にお任せください」「早めに弁護士に相談すれば返金の可能性が高くなる」などとPRし、今野容疑者を「共同受任先」と紹介。だが、当初から事務職員を名乗る男性が対応し、着手金を払った後も鈴木弁護士と直接やりとりする機会は一度もなかったという。  本紙はサイトに掲載された依頼受け付けフリーダイヤルと事務所に電話をかけたが、いずれもつながらず、事務所が入る横浜市中区のレンタルオフィスを訪ねても応答はなかった。県弁護士会は「問題は把握している。会として対応を検討している」と説明した。

◆裏切られた「ここなら大丈夫だろう」

鈴木健弁護士の相談窓口のLINEアカウントから依頼者に送られてきたメッセージ=依頼者提供(一部画像処理)

 投資詐欺で200万円を失った千葉県の30代男性会社員は4月、わらにもすがる思いで鈴木健弁護士のフリーダイヤルに電話を入れた。インターネットで見つけたサイトには「共同受任先」として今野智博元衆院議員の名前。詐欺に遭って疑心暗鬼になっていた男性も「ここなら大丈夫だろう」と信じた。  電話に出たのは事務員の「アオヤギ」を名乗る男。まずLINEのトークに誘導され、そこで被害状況を説明した。やりとりが再び電話に戻ると、アオヤギは「被害から時間がたっていないから、お金が戻る望みはある」と強調。さらにLINEで「弁護士ができること」として、だまされて金を振り込んだ口座の照会などを挙げた。  電話とLINEでやりとりを重ねた後、着手金の24万2000円を支払った。鈴木弁護士と直接話す機会は、一向に訪れなかった。時々LINEで口座情報の照会をかけたなどと報告が入る程度で、それもやがて途絶えた。同じ頃、共同受任先の今野容疑者が警視庁に逮捕されたとニュースで聞き、驚愕(きょうがく)した。  すぐ鈴木氏のフリーダイヤルや事務所の電話に連絡したが、誰も出ない。LINEでメッセージを送っても返信がない。「まさか弁護士が依頼者を裏切るなんて…」。予期せぬ二次被害に遭った男性は「もう何を信じたらいいか分からない」とつぶやいた。(佐藤航) 

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