3年前のクーデターでミャンマー事業を断念した起業家の高田健太さん(35)が、同国の最大都市ヤンゴンで再チャレンジしている。軍政支配が続き経済も混乱する中、現地にとどまるIT人材に海外からの業務を仲介。「起業ハブ(拠点)」の創出を見据え、政情不安で夢を断念した若者に再起の道を示す。(共同通信=小故島弘善)
高田さんは料理宅配サービスを運営していた。しかしクーデター後、国軍の市民への弾圧が強まり、インターネット通信も頻繁に遮断され、事業環境が悪化したことから撤退を決めた。
新たに立ち上げた会社の名前は「プラスインパクト」。政変で活躍の場を失ったIT人材の雇用代行サービス「プラスタレント」を手がける。日本など先進国の開発プロジェクトに、ミャンマーの若者を関わらせることを狙う。
新事業で顧客企業から徴収するのは、ITエンジニアやウェブデザイナーなら月額12万円から。手数料を差し引くと、個人が受け取る報酬はより少なくなるものの、同国は給与水準が低い。プラスタレントを通じて働く20代前半の男性は「妥当な給与を得ながらヤンゴンでキャリアを積める」と笑みをこぼした。
軍政は2月に徴兵制の実施を発表し、男性は国外逃避も考えた。だがミャンマー以外でエンジニアとして採用されるとは思えず、家族と共に現地にとどまりつつ、IT開発に携わる道を選んだ。
高田さんは「ミャンマーにはまだ優秀な人材が多く残っている。ゆくゆくは起業の流れをつくりたい」と語る。電力やネット通信が不安定という事情もあり、オフィススペースを用意。人材の交流の場として機能させたい考えだ。政情が安定する兆しが見えない中、ミャンマーを「ベンチャー企業不毛の地」にはさせたくないと意気込んでいる。
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