目次
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「ハローワーク」「中古車」なぜ検索
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全検索ワード一覧 半年の変化は
6月 最新の検索ワードは
能登半島地震では各地で道路が寸断され、被災地に入ることが難しい状況が続きました。
「被災地の人が検索している言葉を分析することで、いま必要な支援が分かるかもしれない」
NHKはLINEヤフーと共同で分析を続けています。
今回、石川県の奥能登地域(輪島市、珠洲市、能登町、穴水町)を対象に、1月1日から6月23日まで、およそ180日分の検索ワードを分析しました。
実際に6月の検索ワードを見てみます。
(※分析やワード抽出の詳細は文末に記載)
全国と比較して検索の頻度が高かった上位15番目までの一覧です。
ご当地ラーメン店「8番ラーメン」など地域ならではの言葉が。
この店は奥能登地域に3店舗あり、休業が続いていた最後の店が今月、営業再開しました。
また「ボランティア」、「仮設住宅」など復興についての言葉も検索されています。
こうした復興に関するワードを5つのカテゴリに分類。
▽黄色:「ハローワーク」
▽緑色:「車」
▽水色:「水道」
▽紫色:「生活再建」
▽オレンジ色:「支援」
6月に目立ったのは、黄色の「ハローワーク」、そして緑色の「車」の検索です。
サタデーウオッチ9(6月29日放送)
「ハローワーク」「中古車」なぜ検索
「ハローワーク」という言葉は、これまでほとんど検索されていませんでした。
なぜいま検索されているのでしょうか。
6月下旬、輪島市のハローワークを訪れた人を取材をすると…
「仮設住宅に入ることが決まり、ようやく生活が落ち着いてきたので」
(勤め先の建設会社が被災した男性)
「会社に仕事が入ってこず、再び働けるのがいつになるのか分からないので」
(印刷会社で働いていた女性)
仕事を探し始める人が増えていました。
石川労働局によりますと、地震によって失業や休業を余儀なくされるなど、国の特例措置に基づいた雇用保険の失業給付を受けているのは石川県内に1007人。(5月末まで)
この半数近くが奥能登地域の人だということです。
ただ給付にも期限があり、早い人では90日で切れてしまうため、職探しを急ぐ人も出ています。
一方で、大きな壁も。
働きたいのに自分にあった求人が見つからない、いわゆる「雇用のミスマッチ」です。
働ける場所がない
輪島市の笹原たまきさん(66)。
漁師の夫がとってきた魚などを朝市通りで販売していましたが、地震で店は全焼。漁港が被災したため、夫も漁に出ることができなくなりました。
5月から仮設の風呂の設営や運営を手伝うアルバイトを始めましたが、期限は今のところことし8月まで。
ハローワークの求人票を見るなどして新たな職を探していますが、自分に合った仕事を見つけるのは難しいと感じています。
「求人票をみても働ける場所が少ないと感じる。年齢もあって雇われてもついていけるかわからず仕事を探すのは難しい。夫にも仕事を見つけて欲しいが、漁師以外の仕事ができるかどうかわからない」
被災地では求人に出されている職種が限られ、希望に合う仕事が見つかりにくいといいます。
「仕事を探す人は高齢者が割合として多いが、求人は復興関連や介護職などが多いため、希望と合わず難しい状況にある。適切な仕事がなければ、輪島を離れる人も出てくる可能性はある。こちらから別の仕事も提案して就職につなげるなど、寄り添ったマッチングを進めている」
「中古車」「軽自動車」は
もう一つ、6月に目立ったのが緑色で示した「中古車」や「軽自動車」といった車関連の言葉です。
6月19日には中古車情報サイト「カーセンサー」や「軽自動車」が、22日には「中古車」や「車体」が検索されています。
こうした車関連の言葉は、これまでもたびたび見られましたが、さらに増えてきました。
カーショップに話を聞くと…
「5月の大型連休を境に新車・中古車を求める動きが出始めてきた。仮設住宅など住まいが確保できた人もいて、次に生活の足として車を求める人が増えたのではないか」
一方、新しい車を購入するのは簡単ではないという人もいます。
「新たな車が手に入らない」
およそ400台の車を被災者に無料で貸し出している「日本カーシェアリング協会」です。
当初は7月末を貸し出し期限としていましたが、急きょ10月15日までに延長しました。
利用者への聞き取り調査で「期限までに車が手に入らない」という回答が半分を占めたためです。
「経済的に余裕がない」「車の入荷時期が見えない」という理由が多かったといいます。
「熊本地震などこれまでの災害では申し込みにピークがあって、その後は減っていくのだが、今回はニーズが減らず長期化している。車は生活になくてはならないが、買い戻すことは被災者にとってかなり負担が大きい。車がどれだけ被災したか、その実態もほとんど把握されておらず、支援も遅れていると思う」
すでに300万を出費
利用者のひとり、本谷謙さん(55)は珠洲市で鉄工所を営んでいます。
自宅は地震で全壊。鉄工所も大規模半壊の被害を受けました。
仕事用の軽トラックと、家族が通勤に使う自家用車の2台とも家の下敷きになり、今もそのままの状態です。
「家が壊れて住まいを失い、車も潰れて移動手段も失いました。軽トラックは生前父親と仕事で一緒に乗っていた思い出もあります。今はあのしんどかったときのことを早く忘れて、少しずつ元に戻りたいなということばかり考えています」
地震からおよそ1か月後、仕事用に中古の軽トラックを100万円ほどで購入しました。
ただ、自家用車の購入のめどはたっていません。
スマートフォンで「中古車」や「軽自動車」などを探し続けているものの、金額などの条件に合う車がなかなか見つからないといいます。
「軽トラックや仕事道具を買って、光熱費の支払いもあって、すでに出費が300万円ほどにのぼっています。これからは自宅や鉄工所の再建にもお金がかかりますし、仕事も十分にあるわけではないので、先のことを考えると車をもう1台買うのは、厳しいです」
「ハローワーク」や「中古車」といった検索は増えているものの、就職や車の購入にはうまく結びついてない実態が見えてきました。
全検索ワード一覧 半年の変化は
この半年間で、被災地の検索ニーズの移り変わりも見えてきました。
一覧表とともに、ポイントをまとめました。
多様化する「水道」
最大で11万戸が断水した水道。
当初は「断水」と検索されました。
それが数日すると具体的な言葉に変わります。
「トイレ」や「風呂」が検索されていたころには、仮設トイレや入浴支援などニーズが高まっていました。
さらに、1週間ほどすると、
「コインランドリー」が検索されるように。
時間の経過とともに、トイレ、風呂、洗濯と具体化、多様化していったことが分かります。
5月下旬になっても「入浴支援」などの言葉が検索されています。
今も一部の地域で復旧が難しい状況が続いていることが背景と考えられます。
見えてこない「ボランティア」
次に「ボランティア」です。
4月、大型連休を前に多く検索がされています。
この時期、仮設住宅にチラシを配るなど「遠慮せず作業を依頼してほしい」と被災者に呼びかけが行われていました。
一方で、大型連休以外では「ボランティア」の検索はほとんど見られません。
宿泊場所が限られるなどの課題もありますが、4月下旬の時点では輪島市の社会福祉協議会は「被害状況と比べると、住民からの依頼が少ない」と話していました。
地元の人からは「ボランティアの方に申し訳ない」という声や、「ボランティアの活用方法や連絡手段が分からない人もいて情報不足になっている」といった声も聞かれました。
大型連休後は「ボランティア」の検索頻度が再び低くなっていて、被災者とボランティアとをどうつなぐかが課題といえそうです。
検索続く「公費解体」
「公費解体」や「仮設住宅」といった言葉も継続して検索されています。
特に「公費解体」については、5月26日時点で解体が完了したのは、県内で申請のあったおよそ2%にとどまっていて、なかには自費で解体する人もいるなど、被災者の焦りも見られます。
6月に入り各地で公費解体が本格的に始まっていますが、作業の加速化が課題となっています。
終わりに
「何が、いつ、必要とされているのか」
検索ワードから被災地のニーズを分析し、適切なタイミングで支援や情報提供をすることで生活再建や復興に役立てられないか、今後も分析と取材を進めていきます。
(能登半島地震取材班:齋藤恵二郎・鈴木彩里・武田麻里子・國仲真一郎・安永龍平・添盛晃久)
※分析、ワード抽出について
LINEヤフーが個人を識別できない形で集計した検索ワードのビッグデータをもとに機械学習し対象地域での検索ワードと、全国で検索されたワードの差を数値化。
対象地域で全国と比べてより多く検索されたワードを1日ごとに抽出・分析した。
なお、「地震」や「地名」など検索頻度が恒常的に高いものや、「個人の氏名(公人を除く)」、日付、単体では意味をなさないワードなどは除外した。
一覧表においては、除外の結果、ワードの数が15に満たない日がある。
また、カテゴリでの色付けについては、車関連ではメーカー名や車種は被災者のニーズ以外にその日のニュースやリコール等の公表などにも影響されるため色塗りせず、水道関連の入浴施設名については入浴支援の開始や営業再開等のタイミングが異なるため色塗りをしていない。
サタデーウオッチ9(6月29日放送)
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