岐阜県郡上市八幡町の市街地を歩くと、7月13日に開幕する郡上おどりのポスターがそこかしこに貼られている。思い思いに踊りを楽しむ人たちをぬくもりのある筆致で表現したのは、地元の画家水野政雄さん(86)。ポスターの原画を33年間続けて描いている。
満月の夜、郡上八幡城を望む広場で、お囃子(はやし)の乗った「踊り屋形」を幾重にも囲み、浴衣姿で笛や太鼓のリズムに合わせる大人と子ども。ちょうちんや扇子を持って踊る人もいる。
そんな今年の原画について、水野さんは「盆にふるさとに帰って久しぶりに会った人たちと、好きな浴衣を着て踊るところ」と説明する。日本三大盆踊りの一つに数えられ、誰でも輪に入れる郡上おどりの良さを、1週間ほどで描き上げたという。
水野さんは多摩美術大学で油絵を学んだ。卒業後に地元の旧八幡町に戻り、1963年に初めて郡上おどりのポスターの原画を手がけた。高校の美術講師を務めた後、創作活動の傍ら80年代に2回、92年からは毎年、原画制作を続けている。
コロナ禍で中止だった年にも…
造形作家でもあり、絵画だけでなく、和紙人形の写真や切り絵を原画に採用するなど工夫を凝らし、「夏の喜び」を表現してきたという。
「どう描けば温かみが出るか。アイデアが大変だが、ふるさとのためにという気持ちで続けてきた」
水野さんに原画を依頼したのは、郡上おどり運営委員会。委員会に加わる郡上八幡観光協会の岡崎玲子常勤理事は「まちのこと、郡上おどりのことをよく分かっておられ、毎年熱心にデザインしていただける」と話す。楽しみにしている市民が多く、コロナ禍で中止となった2020年、21年も水野さんの原画をもとにポスターを作ったという。
今年の原画は、水野さんの個人美術館「心の森ミュージアム遊童館」(郡上市八幡町島谷)に展示されている。同館には、郡上おどりの様子を再現した紙人形や大型の絵画もある。
ポスターは郡上八幡旧庁舎記念館で800円~1千円で販売されている。(荻野好弘)
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