法務省では27日、高齢化や担い手不足を背景に、持続可能な保護司制度の確立を目指す有識者会議が開かれた。昨春に同省が設けたもので、大津市で保護司の男性が殺害された事件後初めての開催。法務省によると、現役保護司の複数の委員からは、保護司の家族の不安が高まっていると報告され、家族を含めた安全確保や、家族へのアンケート実施を求める意見が出たという。

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 会議では、実費を除き無償としている待遇面や、年齢要件などの見直しの是非について議論している。会議は冒頭のみ公開。法務省によると、この日は法務省の担当者が、事件の概要や、全国の保護司への聞きとり調査を進めている省としての対応を説明。保護司の安全を守る方策として、保護観察対象者を1人で担当することが多い現状を見直すことや、精神的に不安定な対象者を念頭に、専門性のある保護観察所の職員の関与を強めることを望む意見もあがったという。

「社会福祉士ら専門家の保護司任用を」

 今回の事件を踏まえ、保護司制度はどう見直すべきなのか。慶応大の太田達也教授(刑事政策)は「毎年、新規の保護観察対象者が2万人以上いるが、全国で千人ほどの保護観察官が全ての対象者の面接や指導にあたることは不可能で、地域の情報や人材のネットワークを豊富にもつ保護司は更生や支援に欠かせない」と制度の意義を語る。その上で、保護司が自宅で「1対1」で対応する伝統的な手法は「負担が重い上に、安全面のリスクも大きい」と指摘。保護観察官の大幅な増員により、観察官自身が対象者に関与する度合いを高めることや、税理士や社会福祉士、保健師といった専門家の保護司への任用を進めたうえで、複数の保護司がチームで対応できるようにすることが必要だと提言する。(久保田一道)

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