亡き娘の遺志を継ぎ、缶のプルタブを集めて車いすを全国の福祉施設などに寄付している木村喜隆さん(69)、美奈子さん(66)夫妻=福島県いわき市=が、石川県輪島市の市社会福祉協議会に車いす1台を寄贈した。2011年の東日本大震災で被災した木村さん夫妻は「私たちの街も地震と火災で輪島朝市と同じような光景だった。13年かかったが、頑張れば必ず復興できる」とエールを送った。

麻美さんの写真を載せた「あーちゃん号」を囲む(左から)岬はな江さん、久岡政治会長、木村喜隆さんと妻美奈子さん=14日、石川県輪島市で

◆プルタブ2袋分が娘のロッカーに

 木村さん夫妻は01年、高校2年生だった次女麻美さん=当時(16)=をがんで亡くした。所属していた剣道部の友人から、麻美さんが生前、車いすを贈るためにプルタブを集めていたことを知らされた。ロッカーにはプルタブ2袋分が残されていたという。  娘の遺志を継ぎ05年、麻美さんの愛称にちなみ「あーちゃん号」と名付けた車いすの第1号を福島県の福祉施設に届けた。1台を購入するのに約300万個のプルタブが必要といい、夫妻の友人で歌手の岬はな江さんも協力。これまで12都県に計16台を贈ってきた。  17号の寄贈先として石川県輪島市を選んだのは「私たちの境遇と同じだと思ったから」と木村さん。13年前、地震と津波でいわき市にあった自宅は全壊し、街も大規模火災に見舞われた。ただ、現在は人が戻って生活再建を果たしており、「(輪島の)復興が遅くて今は大変だと思うけど、必ず復興できる」と力を込める。

◆「娘を嫁がせる気持ち。使う人を笑顔に」

 車いすは特注品。赤いフレームの他、花が好きだった麻美さんをイメージし、花柄があしらわれている。木村さんは「娘を嫁がせる気持ち。明るいイメージの車いすで、使う人が明るくなってくれたらうれしい」と願った。  輪島市社会福祉協議会の久岡政治会長(65)は「亡くなった娘さんの気持ちを大切にして使っていきたい」と感謝した。車いすは、障害者や高齢者への貸し出しや、子どもたちの福祉教育に活用していくという。(郷司駿成) 

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