地元の川でのサケ漁は先住民族の集団に固有の権利(先住権)だとして、北海道浦幌町のアイヌ団体が国と道を相手取り、漁業権がある確認などを求めた訴訟の判決で、札幌地裁は18日、原告側の訴えを退けた。アイヌ民族の先住権をめぐる判決は初めて。
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2019年に施行されたアイヌ施策推進法には、アイヌ民族は「先住民族」と明記されたが、先住権については触れられていない。
水産資源保護法などの定めでは、アイヌ民族に限らず、河川でのサケ漁は原則禁じられている。だが、サケはアイヌ民族にとって「カムイチェプ」(神の魚)。アイヌ民族が文化を伝承、保存するため、知事の許可を得れば、特例としてサケ漁が認められている。
原告側は、明治政府に禁止されるまで、先祖が浦幌町内を流れる浦幌十勝川周辺でサケ漁をしていたとし、漁業権を引き継いだと主張。先住権は「長年の慣習で確立した権利であり、国際法や国連の先住民族権利宣言でも根拠づけられている」とし、生業としてのサケ漁(河口から4キロ内)の権利回復を求めた。
一方、被告側は、現状の制度は「サケ資源の枯渇を避けるために必要な規制をしつつ、アイヌの人々の文化享有権にも配慮した合理的なものだ」と反論。原告側の請求については「日本の法制度上の根拠がなく、慣習法として成立する余地もない。国際法もサケ漁業権の保障までを義務づけていない」とし、退けるよう求めていた。(上保晃平)
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