宝塚歌劇団の宙組では2023年9月に所属していた25歳の劇団員が死亡し、歌劇団側はことし3月、遺族側と合意書を締結して上級生などからのパワハラがあったことを認めた上で遺族に謝罪するとともに、再発防止策を公表しました。

宙組の公演は、中止が続いていましたが20日、およそ9か月ぶりに再開され、午後1時から兵庫県の本拠地、「宝塚大劇場」で行われました。

会場には午前中からファンが次々に訪れ、ポスターの前で写真を撮るなどしていました。

準備期間や劇団員の負担など考慮しショーのみの開催

公演はこれまで芝居とショーの2本立てでしたが、今回は準備期間や劇団員の負担などを考慮し、ショーのみの開催となりました。

歌劇団によりますと、公演に先立って村上浩爾理事長があいさつし、中止が続いたことなどについて「大変ご心配とご迷惑をおかけしましたこと、改めて深くおわび申し上げます」と述べて観客に謝罪したということです。

観劇を終えた60年来のファンだという宝塚市の70代の女性は「劇団員の熱が感じられる舞台で、客席からも大きな拍手が上がっていました」と話していました。

また、神戸市の30代の男性は「劇団員一人ひとりがけがや事故がなく稽古できる環境を目指してほしい」と話していました。

再発防止策の柱の1つ 劇団員の負担軽減

宙組ではことし3月から5月にかけて4人の劇団員が相次いで退団し、現在の所属は60人と、ほかの組と比べて10人ほど少なくなっています。

7月20日からは東京の劇場でもおよそ1か月の公演が予定されていて、再発防止の取り組みが今後の公演などにどう生かされるのかが注目されます。

劇団員が死亡した問題を受けて、宝塚歌劇団側が公表した再発防止策の柱の1つが劇団員の負担軽減です。

宝塚歌劇団によりますと、このうち公演スケジュールについてはことし1月から見直しを進めていて、1週間あたりの公演回数を10回から9回に減らしています。

また、これまで出演者が担当していた稽古の準備に伴う作業をほかのスタッフがサポートするなど、環境の改善に向けた取り組みも進めています。

このほか、伝統的に受け継がれてきた上級生へのあいさつなどのうち、今の時代に合わないものについては順次、廃止したり変更したりしているということです。

識者「ハラスメントなくなる組織文化の定着が求められる」

大阪音楽大学 松本俊樹講師

宙組の公演の再開について、日本の演劇史が専門で宝塚歌劇に詳しい大阪音楽大学の松本俊樹講師は、「劇団員の間の上下関係はこれまで美化されてきた面があるが、宝塚歌劇のよさは過度な厳しさに裏打ちされたものではないはずだ。慣習を変えたところでファンが望む“タカラヅカらしさ”が消えることはないだろう」と指摘しています。

その上で「改革はまだ始まったばかりだが、歌劇団側は劇団員が働く環境を見直し、ハラスメントなどがなくなるような組織文化を定着させていくことが求められる。舞台に立ちたいと思って入ってきた人たちが『楽しかった』と思えるような“タカラヅカ”であってほしい」と話していました。

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