飼い主の村上瑠衣さんのそばでくつろぐチワワのウィル=中央区の日本保釈支援協会で
Take(Bring) Your Dog To Work Day 1996年に英国、99年に米国で導入された記念日で、毎年「父の日(6月第3日曜日)の後の最初の金曜日」。ペットの殺処分を減らすため、飼い犬を職場に同伴することで犬を飼っていない人にも関心を持ってもらうのが狙いとされる。
犬の同伴出社は、米国のグーグルやアマゾンなどで日常的に行われている。国内ではペット関連企業を中心に導入する動きがある。
◆3カ月に1回開催 「面倒みられて安心」
事務所の中を、チワワの「ウィル」とトイプードルの「良(りょう)」が駆け回っていた。一般社団法人「日本保釈支援協会」(中央区日本橋茅場町1)は3カ月に1度の割合で、飼い犬を職場に同伴していい日「ワンワンデー」を定めている。 チワワの飼い主は事務局長の村上瑠衣さん(42)。「いつもは自宅に残して出勤するので気がかりだけど、職場に連れてこられるとすぐに面倒をみられるので安心」と語る。トイプードルの飼い主の専務理事斎尾紀幸さん(60)は「職場のみんなに理解があり、助かる」と話す。◆「犬を気遣える人は、同僚を気遣える人」
デスクで犬と触れ合う職員たち=中央区の日本保釈支援協会で
協会が犬との同伴出勤を認めたのは7年前。複数の職員の希望があって導入した。現在は職員10人のうち1人は犬が苦手のため、その職員が休みを取得する平日をワンワンデーにしているという。犬が職場でマーキングする問題があるが、この日の2匹はともに紙おむつが着けられ、対策が講じられていた。 協会は刑事事件の被告人の保釈保証金を立て替えたり、保釈についての相談を受けたりしている。事務所には多くの電話がかかってくるが、村上さんは「犬はおとなしくしている。業務への影響はない」という。斎尾さんは「職場の雰囲気が和やかで明るくなり、自分の仕事がはかどる。職場での理解が得られる限り、ワンワンデーを続けていきたい」と話している。 ◇ ◇◆社員同士のコミュニケーション、寛容さにつながる
キャンパス内を移動する麻布大の菊水健史教授とスタンダードプードルのケビン・クルト=相模原市中央区の麻布大で
人間と犬の関係を研究している麻布大(相模原市)の菊水(きくすい)健史・獣医学部教授(54)に、職場に犬がいることの効用について聞いた。 —米国などでは職場に犬を同伴することを認めている企業が多い。犬がいることの効用は? まず、犬を飼っている家庭は「ウェルビーイング」(幸福度)が高いというデータがある。親子の会話量が増え、関係性もいいという。これは職場にもあてはまり、犬が介在することで社員同士のコミュニケーションが高まり、人間関係も良好になる。仕事の効率が上がったとの報告もある。 —一方で犬がいるとなると制約も生じる。犬が苦手な人への配慮も不可欠だ。 衛生面の管理、動物アレルギーや犬嫌いという人への対策は必要だ。ただ、犬という生き物が職場に存在することに対してさまざまな配慮が行われ、ひいては寛容度が高まっていく。3カ月に一度のワンワンデーに事務所の中を元気よく走る犬たち=中央区の日本保釈支援協会で
—麻布大はドッグランがあるなど施設が充実している。菊水教授も愛犬と同伴出勤しているが、日本の現状と今後は? 米国に研究留学していた2000年から犬を飼い始め、今飼っているスタンダードプードルのケビン・クルトは4代目。日本は先進国の中で犬の飼育率が低い上、飼っている家庭も減少傾向にある。ウェルビーイングや寛容度が下がっていくのではないかと懸念している。 文・桜井章夫/写真・市川和宏、松崎浩一 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。