自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件で、二階派の政治資金収支報告書に虚偽の収支を記載したとして、政治資金規正法違反(虚偽記入)罪に問われた元会計責任者、永井等被告(70)の初公判が19日、東京地裁であった。永井被告は起訴内容を認めた上で、被告人質問で政治家の指示は「一切ありません」と述べて国会議員の関与を否定した。

◆パー券「買い控え」防ぐため、収入を過少記載

 検察側は冒頭陳述で、収支報告書に実際より少ない収支額を記入したのは、永井被告が「パーティー券の売り上げが多額だと明らかになれば、支援者らの買い控えが生じるかもしれない」と考えたためと指摘した。収支報告書は、被告の指示を受けた事務職員が作り、被告は内容を確認して了承していたとした。  政治家の関与については「派閥幹部」の議員らに、報告書に記載した虚偽の収支総額を口頭で報告するのみだったとしたが、議員の実名は明かさなかった。  冒頭陳述によると、永井被告は1999年から会計責任者を務め、その後は事務局長や代表も兼務。議員らにパーティー券の販売ノルマを割り当てて派閥の口座に入金させるなどし、売り上げを集計していた。ノルマ超過分が入金されれば、議員らの政治団体に還流させるなどした。  起訴状によると、2018〜22年の二階派の収支報告書に収支計約3億8000万円を記載しなかったとされる。  次回公判は7月22日で検察側の論告と弁護側の最終弁論がある。判決は9月10日の予定。  一連の事件で正式裁判が開かれるのは、安倍派会計責任者の松本淳一郎被告(76)=同法違反罪で公判中=に次いで2人目。(中山岳)   ◇  ◇

◆「根本的に私の考えが間違っていた」

 「いつ何があるか分からないので(派閥に)お金を残したいと思った」「与野党逆転や与党内の覇権争いもあり、残しておくべきだと思った」。初公判で起訴内容を認めた永井等被告。被告人質問で弁護人から「派閥にお金があった方がいいと、なぜ思った?」と尋ねられ、過去の政権交代などに触れながら、政争に備えた派閥の蓄財の目的もあったと明かした。  永井被告は黒のスーツ姿で出廷。収支報告書に記載しなかった金の使い道は「選挙に関わる交通費や宿泊費」とし、個人的な支出や着服はなかったとした。  向井香津子裁判長からは虚偽記入を始めた時期を問われた。永井被告は「はっきり覚えていない。(起訴内容より)ずっと前ではない」と説明。「派閥は所属議員が少なく事務所の維持が困難だった時期もあった。なにがしかのお金を蓄える必要があると思った」とも答えた。  検察官から今の気持ちを聞かれると、「根本的に私の考えが間違っていた。このような大きな問題に発展したのは、不徳のいたすところ」と後悔を口にした。(中山岳) 

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