知床世界自然遺産の知床岬で進む携帯電話基地局の整備事業について、北海道斜里町議会の6月定例会議が19日開かれ、一般質問で計画に反対する意見が出された。議会で反対が表明されたのは初めて。

 金盛典夫議員は「計画反対」を明言した上で、太陽光パネル群の設置による「世界の宝・知床の価値の損失」「秘境性を求める人たちへ与える幻滅感」「他の国立公園、世界自然遺産の保護管理への悪影響」などを列挙した。

 山内浩彰町長は、小型旅客船の沈没事故を受け、海域の通信環境整備の促進を国に要望してきた経緯を説明し、「通信環境の改善によって得られる安全安心を望む立場に変わりはない」。その上で、「世界自然遺産の自然景観の保護との両立を図ることを計画推進の条件としてきた」と強調した。

 山内町長は町のホームページで国に再検討を求める姿勢を示している。この中で、知床岬の工事はいったん停止し、他の斜里町ウトロ地区と羅臼町ニカリウス地区の2基地局の整備により、エリア全体の電波改善状況を見極め、そのあとで知床岬に基地局が必要かを判断してはどうか、との打開策も記した。

 その後、知床岬で繁殖するオジロワシへの影響が研究者から指摘され、工事は中断。臨時開催された知床世界自然遺産地域科学委員会では、オジロワシの調査がなされないまま環境省が事業者に許可を出したことで疑念が続出。野生動植物への影響を再調査するよう求めた。調査が終わるまで工事は中断する見込みだ。

 こうした現状を踏まえ、山内町長は「科学的検証がなされた上で、世界自然遺産の持つ普遍的価値という公益性が損なわれることがないよう、皆で知恵を出し合い、可能な限り努力と工夫をすべきであるという考えを改めて申し上げる」と答弁した。(奈良山雅俊)

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