「検察なめんな」

 容疑者にそう迫った検事の取り調べ映像の一部が今月11日、大阪地裁で行われている民事裁判の法廷のモニターで再生された。

 5分ほどの映像に冒頭の言葉はなかったが、「あなたは大罪人」と追及する様子が記録されていた。

 大阪地検特捜部が2019年に着手した業務上横領事件。学校法人を買収し、法人の土地を売って手付金21億円を私的に使ったとして、法人の元理事長らが逮捕された。その後、買収にあたって18億円を貸した不動産会社「プレサンスコーポレーション」元社長・山岸忍さん(61)も逮捕され、横領の計画を知っていたかが焦点になった。

 21年、山岸さんに「買収資金という認識はなかった」とする大阪地裁の無罪判決が確定。長く勾留された山岸さんが国に賠償を求め、大阪地裁に提訴した。

 映像はこの訴訟の中で再生された。

 男性検事(52)が山岸さんの部下だった男性(59)=有罪確定=を取り調べる様子を録画したものだ。

 「検察なめんな」と迫った翌日の取り調べで、この検事は山岸さんの関与を否定する元部下をさらに追及した。

 「あなたはプレサンスの評判をおとしめた大罪人」

 「今回の風評被害とか受けて、(会社の)損害を賠償できます? 10億、20億じゃ済まないですよ」

 責任を「背負えないですね」とつぶやく元部下に、たたみかける。

 「背負えないよね。そんな話していて、大丈夫?」

 「まただんだん悪い顔になってきてるよ」

 元部下はこの後、供述を変え、山岸さんを「共犯」と証言する供述調書が翌日に作られた。ただ、山岸さんの刑事裁判では、取り調べ映像をもとに証言の信用性が否定された。

 映像の再生後、証人として出廷した検事は「検察なめんな」などと迫った理由を尋ねられた。検事は「(元部下が)悪びれる様子もなく平然とうそを言ったから」で、「真摯(しんし)に取り調べに向き合ってほしかったから」と釈明した。(山本逸生)

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