公立小中学校などの給食費について、全国の自治体の3割が2023年度時点で無償化していることが12日、文部科学省の調査で分かった。約4%だった17年度時点より大幅に増えた。アレルギーなどを理由に給食の提供を受けていない児童生徒が約28万人いるなど、政府が是非を検討している一律無償化に向けた課題も明らかになった。

学校給食法などは給食を提供するための設備費や人件費を自治体の負担とする一方、食材費は保護者の負担としており、各自治体が給食費として徴収している。

調査は公立の小中学校や特別支援学校などについて、23年度の状況を聞いた。

全国1794自治体のうち30.5%を占める547自治体が小中学校などで全員を対象に給食費の無償化を実施していた。

小学校のみ実施したり、多子世帯といった条件を定めたりして、一部で無償化しているのは175自治体だった。

前回の17年度調査では、小中学校などで全員を対象に無償化していたのは76自治体(4.4%)だった。今回とは異なり主食やおかずを提供する「完全給食」のみに絞った調査結果だが「全体的に無償化する自治体が増加傾向にある」(文科省担当者)という。

無償化に踏み切る自治体は近年相次いでいる。東京都八王子市は8月下旬から実施予定。青森県は10月から県内全てで始める予定で、都道府県単位での実施は初めてだという。

目的を複数回答で聞いたところ、「保護者の負担軽減や子育て支援」や「少子化対策」とした自治体が多かった。

今回の調査は、政府が23年6月に公表した「こども未来戦略方針」で「無償化の実現に向けた実態調査を行う」などとしたことを受けて行われた。自治体からも国による無償化を求める声が上がっている。

一方で同省は調査結果を受け、一律無償化に向けては「児童生徒間の公平感の確保などについて、今後検討する必要がある」とした。

課題の一つは、アレルギーで弁当を持参したり不登校だったりして、給食の提供を受けていない児童生徒が約28万5000人に上ったことだ。こうした児童生徒は無償化による恩恵を受けられず、不公平感が生じる恐れがある。

自治体によって給食の提供内容や経費で差があることも判明。小学校の食材費(1人分の平均月額)を都道府県別でみると、完全給食では、最高の福島県(5314円)と最低の滋賀県(3933円)で約1.3倍の差があった。一部では牛乳やおかずのみといった「補食給食」や牛乳のみの給食を提供しており、1000円を下回る場合もある。

一律で無償化するとしても、公費負担の水準などが簡単には決められない可能性がある。

食材費は高騰しており、完全給食の食材費(同)の全国平均は小学校で4688円、中学校が5367円で、直近10年間で約12%上昇した。全国の食材費の合計は年約4800億円に上り、財源の確保も課題となる。文科省はこうした調査結果を受け、一律で無償化すべきか引き続き検討する方針だ。

(三浦日向)

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