公立小中学校の児童生徒全員の給食費を無償化している自治体が、2023年9月時点で、全国の3割にあたる547あったことが、文部科学省の調査で分かった。17年度の同様の調査から6年で約7倍に増え、子育て支援の一環で無償化する動きが広がっている状況が浮かんだ。政府は今後、全国で無償化できるか検討を進めるが、費用面などから実現するかは不透明だ。

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 文科省が12日、全国の自治体の給食費無償化の状況を調べた結果を公表した。児童生徒全員を対象にするか、支援要件を設けるなど一部の児童生徒を対象にして「無償化を実施中」としたのは722自治体。このうち「小中学校ともに全員が対象」は547自治体(75.8%)で、17年度の76自治体から約7倍に増えた。多子世帯に限定するなど支援要件を設けていたのは145自治体(20.1%)。一部の学年に限定して無償化しているところもあった。調査時には無償化していなかったが23年度中に実施予定とした自治体も40あった。

無償化やめる自治体も相次ぐ

 無償化した理由についても複数回答可で聞いた。652自治体(90.3%)が「保護者の経済的負担の軽減、子育て支援」、66自治体(9.1%)が「少子化対策」(子どもの増加を期待した支援)、37自治体(5.1%)が「定住・転入の促進、地域創生」(人口増を期待した支援)を選んだ。

 一方、無償化の継続が難しい面も見えた。722自治体のうち24年度以降に続ける予定はないと答えた自治体は82(11.4%)あった。文科省の担当者によると、財源の問題から、時期を限って無償化する自治体は、珍しくないという。

全国的な無償化、実現の可能性は

 今回の調査は、昨年6月に発表された岸田政権の少子化対策「こども未来戦略方針」を受けたもの。全国での給食無償化実現に向けて実態調査をすることが盛り込まれていた。今後、実現に向けて課題の整理を行う。

 ただ、学校給食を所管する文科省の試算によると、全国の公立小中学校で全員を対象に無償化するには、同省予算の約1割にあたる約5千億円が必要。同省予算の中からの捻出は厳しく、省内では実現は容易ではないとの見方が広がっている。

 調査では、国公私立あわせて約26万5千人の中学生(全体の8.3%)が、給食の実施校に在籍していなかったこともわかった。また、公立小中学校の給食実施率はほぼ100%だが、アレルギーや不登校、給食が選択制などの理由で、実際には給食を食べていない公立小中学校の児童生徒が約27万5千人(3.1%)いたこともわかった。(山本知佳)

学校種別の完全給食(おかず、主食、牛乳の給食)実施校の割合

【小学校】

公立 99.5%

国立 98.5%

私立 43.4%

【中学校】

公立 97.1%

国立 20.6%

私立 8.2%

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