東京・晴海フラッグ、ロンドン、パリと選手村やその跡地を巡ったが、デジャブ(既視感)を感じた。ピカピカのマンション群や商業施設が立ち、環境にも配慮した洗練された街に生まれ変わった。一方、その陰で、建て替えや家賃高騰で元の住民が排除されるなど「商業五輪」の負の面も取材で感じた。

 近代五輪の父・クーベルタン男爵が考案した五輪のシンボルは5大陸の団結を表す。五輪が掲げる最も大切な理念は平和だ。ただ、現実はロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃は続き、マクロン仏大統領らが五輪期間中の全世界での休戦を提案するが、戦闘が収まる気配はない。

 五輪が掲げる理想と現実とのひずみは広がる。東京大会をめぐるゴタゴタや汚職を目の当たりにし、五輪への見方が厳しくなる中、男爵の故郷で100年ぶりに大会が開かれ、世界中から選手が集う。

 これを機に、「スポーツを通じて、差別や暴力のない社会を目指す」という原点に立ち戻り、理念と遠く離れた五輪の見直しが少しでも進む大会になって欲しい。従来のままでは、五輪憲章が唱える理想は絵空事のままだ。(河崎優子)

A-stories 合わせ鏡のオリンピック 東京とパリ

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