信号機のない横断歩道で歩行者がいるとき、一時停止する自動車の割合が茨城県は全国ワースト5位――。そんな不名誉な状況を改善しようと、水戸市がドライバーに一時停止を呼びかける啓発動画を作った。YouTubeで公開している。

 動画は約1分40秒。撮影にはプロバスケットボールB1の茨城ロボッツや市民ボランティアが協力した。チーム公式キャラクター「ロボスケ」を追って横断歩道を渡ろうとするファンの目前を、車が一時停止せずに走り去る場面が演じられ、ロボッツの選手が「横断者がいる場合は、必ず一時停止して!」と呼びかける。

 水戸市は2022年度から、信号機のない横断歩道を渡る際には、手を挙げることで車の停止率が上がると知らせる啓発チラシ約2万2千枚を、高齢者や児童・生徒を中心に配布してきた。

 市によると、市が実施した調査では、市内の信号機がない横断歩道で一時停止した車の割合は、28.1%と低水準だった。日本自動車連盟(JAF)による昨年8~9月の全国調査でも、一時停止率は県全体で27.6%と、全国平均(45.1%)を17.5ポイントも下回り、ワースト5位だった。

 こうした中で、ドライバーの意識を変えていこうと考えたのが今回の動画だ。コロナ禍が落ち着き、市内でも海外からの観光客の姿を見る機会も増えてきていることもあり、英語、中国語、韓国語版も公開している。市生活安全課の鴨志田創・副参事は「一人でも多くの人に見てもらい、信号機がない横断歩道での事故の危険性をよく知ってもらいたい」と話す。

 県警交通総務課によると、昨年、県内の信号機のない横断歩道で起きた交通事故は67件。うち2件が死亡事故だった。県警は横断歩行者妨害の取り締まりを強化するとともに、昨年来の高齢者宅約53万世帯への「巡回連絡」強化で、事故防止に役立つ反射材を配布したり、危険性について伝えたりする取り組みを続けている。

 死亡事故は減ったが事故件数は増加傾向にあるといい、同課の石黒真人・総括理事官は「自治体とも連携を強め、事故の減少にさらに努めていきたい」と話す。(古庄暢)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。