勤務地で地域手当の支給額が減るのは、裁判官の報酬の減額を禁じた憲法に違反するとして、津地裁の竹内浩史・部総括判事(61)が16日、国を相手取り5月にも「減額分」の支払いを求めて名古屋地裁に提訴すると発表した。現職裁判官が国に対して訴訟を起こすのは極めて異例という。

 名古屋市内で会見した竹内氏や最高裁判所などによると、裁判官には勤務地により地域手当が支給される。支給額はその地域の民間企業などの賃金状況などに応じた割合を基本給に当たる俸給にかけて算出される。割合は8区分され、東京23区で20%▽大阪市16%▽名古屋市15%▽津市6%――などとなっている。

 割合が低い地域に異動した場合、緩和措置として、異動1年目が異動前と同じ、2年目はその8割、3年目からは異動先の割合になるという。

 憲法80条2項は「下級裁判所の裁判官の報酬は在任中減額できない」と定めている。竹内氏は2020年に大阪高裁から名古屋高裁、21年に同高裁から津地裁に異動。手当の割合が下がったことで実質的に報酬が3年間で計約240万円減ったと主張している。

 竹内氏は「不合理な制度で多数の裁判官が不満を訴え、若手も辞めている。なんとかしないと地方に行く裁判官がいなくなってしまう」と指摘した。最高裁広報課は「コメントは差し控えます」とした。

 竹内氏は1987年に弁護士登録。公害訴訟の原告代理人や名古屋市民オンブズマンのメンバーを務めた後、弁護士任官制度で2003年に裁判官になった。実名で連日ブログを更新し、仙台高裁判事だった岡口基一氏の弾劾(だんがい)裁判では弁護側証人として出廷。罷免(ひめん)を避けるよう意見していた。(高橋俊成)

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