農業用ビニールハウスで避難生活を続ける人もいる(5月)=共同

能登半島地震の発生から5カ月となった石川県内では、体育館や公民館といった1次避難所で過ごす人が1736人(5月28日時点)に上るなど、避難生活の解消は見通せない。中には「地元から離れたくない」とビニールハウスで暮らし続ける人もいる。

輪島市長井町のビニールハウスで5月下旬、10〜70代の4世帯11人が過ごしていた。夜はテントに泊まり、朝にハウスへ集まって中高生4人の登校を大人たちが見送る。それぞれの倒壊した住宅がそばに見える。

ハウスの持ち主、保靖夫さんは「みんなで話し合い、知らない人が多い場所よりここで暮らそうという結論になった」。子どもが以前と同じ学校に通えることも大きな理由だ。

今、保さんが最も心配しているのは梅雨の長雨だ。地面がむき出しのハウス内にはぬかるみができる。蚊など虫が多く出ることも予想される。「蒸し暑くなり、熱中症も心配だ」と気をもむ。

石川県によると、5月28日時点で、県内の1次避難所は114カ所。2016年の熊本地震では、熊本県内の避難所全ての閉鎖まで約7カ月かかった。

石川県と市町は仮設住宅の完成に合わせ避難所を集約し、閉鎖していく方針だ。輪島市では約2900戸の仮設住宅が必要で、これまでに約1900戸が完成した。

保さんらビニールハウス暮らしの4世帯も申し込んでいるが、入居決定の連絡はない。「梅雨までに仮設に入りたいが、どうせ駄目だろう」。保さんは諦め顔だ。

これから夏を迎える被災地で、懸念される問題の一つが食中毒だ。輪島市や珠洲市は、食中毒の恐れから、在宅避難者らへの弁当配布を原則として取りやめた。だが、弁当配布はコミュニケーションや健康状態確認の機会でもあったため、避難者が孤立しかねないとの批判もある。

避難所か在宅かにかかわらず、孤独死や災害関連死を防ぐには避難者のこまめなフォローが不可欠だ。福井大の酒井明子名誉教授(災害看護学)は「支援の手が途切れると、避難者は助けを求めづらくなる。関連死が増える可能性もあり、丁寧なフォローが必要だ」と指摘する。

珠洲市の泉谷満寿裕市長は「保健師らが個別に巡回するローラー作戦で、被災者を支援したい」と話している。〔共同〕

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