新型コロナ対策として政府が全国に配った布マスク(通称・アベノマスク)をめぐり、神戸学院大の上脇博之(ひろし)教授が業者との契約過程を明かすよう国に求めた訴訟で、大阪地裁は16日、配布を担った国の「マスクチーム」のメンバーで、実際に業者とやりとりした経済産業省の職員ら5人を証人として呼ぶと決めた。

 原告側によると、契約過程を知りうる職員の証人尋問は初めて。この日の口頭弁論で、原告側が求めていた証人尋問について、国側も受け入れる意向を示した。6月の口頭弁論で正式に決定し、8月下旬にも出廷する予定だ。

 原告側代理人の谷真介弁護士は「現場レベルの具体的なやりとりを明らかにしたい」と話した。

 政府は緊急事態宣言を出した2020年4月、新型コロナ対策として布マスクを各戸に配ることを閣議決定。400億円超の経費をかけて複数業者と随意契約を結び、3億枚あまりのマスクを調達した。ただその多くは配りきる前に需要がなくなり、返却や寄付も相次いだ。安倍晋三首相(当時)が着用を呼びかけたマスクは「アベノマスク」と揶揄(やゆ)された。

 上脇氏は同年7月にかけて契約や発注の経緯に関する文書やメールなどを開示するよう求めたが、国が見積書や納品書、契約書以外は不開示としたため、翌21年2月に提訴していた。

 布マスクをめぐっては、単価や発注枚数の情報を「黒塗り」にした国の対応の是非が争われた訴訟で、大阪地裁が23年2月に開示を命じる判決を出し、確定している。(大滝哲彰)

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