佐世保市立大久保小で開かれた、命の大切さを考える全校集会(1日午前)=共同

長崎県佐世保市の市立大久保小で、6年生の御手洗怜美さん(当時12)が同級生の女児に殺害された事件から1日で20年となった。加害女児には「予兆」とみられる行動や様子もあったが、事件を防ぐことはできなかった。市は再発防止に取り組み、命の尊さを学ぶ教育を続けている。記憶の風化も懸念され、専門家は「少年犯罪の防止に気を引き締め直すべきだ」と訴える。

「事件を知らされた瞬間のことが今も頭から離れない」。2004年6月1日、当時中学3年生だった怜美さんの兄(34)はインターネットのニュースが印刷されたA4用紙1枚を教員から渡された。

自身も加害女児と顔見知りだった。背景には2人の交換日記やネット掲示板の書き込みを巡るトラブルがあったとされ、怜美さんから相談も受けていた。「周囲が早く介入すれば起きなかったのか」という疑問の答えは出ていない。

県教育委員会の報告書によると、加害女児には残忍な映画や小説を好む傾向や若干感情的になる瞬間があったが、教員らは察知できず、重大に捉えなかった。「(事件後に)改めて思い起こした内容であり、直接結びつけて予兆と捉えることは困難であった」と結論付けた。

異変の見落としを防ぐために、市教委は09年、児童や生徒の問題行動や必要な支援を記録して進学、進級時に引き継ぐシステムを導入。毎年6月に市内の公立小中学校で命の尊さを学ぶ行事を行っている。

事件後に佐世保市立大久保小の校長を務めた三島さん(5月、長崎県佐世保市)=共同

取り組みの形骸化を指摘する声もある。07年から大久保小の校長を務めた三島智彰さん(70)は「事件が起きた背景や経緯を含め、当時を知る人も交えながら、現場の教員たちには再発防止のために何が必要かをいま一度考えてほしい」と話す。

長崎大「子どもの心の医療・教育センター」の岩永竜一郎センター長は「20年前に比べ、問題を抱える子どもに対する教育現場の理解は進んだ。学校や専門家に早めに相談することが、深刻な事態を防ぐことにもつながる」と指摘する。

「体制を整えても10年、20年という時間の経過が気の緩みにつながる可能性もある。節目節目に引き締め直すことが重要だ」と強調した。〔共同〕

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