外国人技能実習生の指導員だった女性の職場外の業務について、「みなし労働時間制」を適用できるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(今崎幸彦裁判長)は16日、適用を認めず団体側に未払い賃金の支払いを命じた二審・福岡高裁判決を破棄し、審理を同高裁に差し戻した。

労働基準法は、外回りなどで「労働時間が算定しがたいとき」はみなし労働を適用できると規定。実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定められた時間分働いたとみなしている。最高裁は適用可否の判断にあたり、日報などの記録に加えて、客観的な裏付けを重視した形だ。

原告の女性は熊本市内の監理団体で技能実習生の指導員として勤務。実習生の生活指導やトラブル対応などを担っていた。団体側は労働時間の算定は困難だとしてみなし労働を適用し、所定の賃金を支払った。女性は適用は不当だとして未払い分の支払いなどを求めて提訴した。

第3小法廷は女性の業務について「自らスケジュールを管理し、自身の判断で直行直帰することも許されていた」とし、一定の裁量があったと指摘。団体側が勤務状況を具体的に把握することは「直ちに容易とは言いがたい」と述べた。

一、二審が適用を否定する根拠とした業務日報に関して、内容の正確性が十分に検討されていないと問題視。「日報による報告のみを重視して『算定しがたいとき』にあたらないとした判断は違法」とし、実態を反映した記録といえるか改めて審理すべきだと結論付けた。

2022年11月の二審判決は、女性が団体に提出していた業務日報には始業や終業の時間、行き先や面談相手などが具体的に記録されており、内容について実習生らに確認することもできたとして、みなし労働制は適用できないと判断した。一審・熊本地裁に続き、団体側に約29万円の支払いを命じていた。

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