「東のサケ、西のブリ」という言葉がある。年末から正月にかけて食膳にのぼる伝統的な魚は、東日本ではサケ、西日本ではブリが代表格とされる。これは、日本の魚食文化に存在する「地域性」を示すものだ。

 東日本と西日本で魚種に違いが生まれた背景について、水産庁は「まだ冷蔵・冷凍技術が発達していない高度経済成長期以前、東ではサケが、西ではブリが冬によく取れていたことが、このような分布になっていると考えられる」としている。

 ところが近年、北海道~東北地方で、昔に比べてサケの漁獲量が減っている。サケは低い水温を好む魚であるため、「海の温暖化」にともなう海水温の上昇が、その要因として指摘されている。

 そして北海道では逆に、これまで漁獲量が少なかったブリが、かつてない大漁続きとなっている。近年の水揚げ量は、1990年代に比べて約20倍に達する。

 サケの本場である北海道で、主役のサケが減り、代わりにブリが増えるという、実に皮肉な状況になっているのだ。

 北海道でブリの漁獲量が増えた要因として、海洋研究開発機構の研究チームは、「海洋熱波」の影響を指摘している。海洋熱波とは、海水温が極端に高い状態が5日以上続く現象をさす。

 海の温暖化、特に、海洋熱波の発生によって、水産物の中でも今後、増えるものと減るものが、それぞれ出てくることになるだろう。

 気候変動が私たちの食卓、そして日本の食文化に与える影響について、今後も取材を続けたいと考えている。

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