名古屋地検から暴行容疑で不起訴処分(起訴猶予)を受け、勤務先の県教育委員会から処分された原告が、不起訴理由を「嫌疑なし」に変更することなどを国に求めた訴訟の控訴審判決が30日、名古屋高裁であった。

 長谷川恭弘裁判長は、不起訴理由の変更は一審を支持して認めなかった一方で、一審判決を一部変更。「原告の承諾なく、地検が起訴猶予という理由を県教委に伝えたのは違法」として、国に5万円の賠償を命じた。

 判決によると、原告は2017年、上司を紙製の箱で1回たたいたとされる暴行容疑で書類送検され、同年、地検は不起訴とした。地検は県教委からの照会を受け、その理由を起訴猶予と伝え、県教委はこれを踏まえて原告を戒告の懲戒処分とした。

 長谷川裁判長は、起訴猶予は容疑事実は明白だと検察が判断したことを意味しており、これが明らかになれば、容疑者の名誉・信用を損なうと指摘。一方、起訴された事件でも無罪になることがあるため、「容疑事実が明白」として検察がした起訴猶予の判断が正しいとは限らないとした。その上で、こうした性質の情報を地検が原告の承諾なしに外部に明らかにしたことで、名誉を損ない、無罪推定の権利などを侵害したなどと認定。また、正しいとは限らない検察の判断が県教委に伝えられたことで、県教委による懲戒権の適切な行使も妨げたとした。

 地検の堂免雅樹・次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントした。

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