「叡王戦」五番勝負は、ここまで伊藤七段が2勝、藤井八冠が1勝で、伊藤七段がタイトル奪取に王手をかけています。

30日は千葉県柏市に設けられた対局室を2人が訪れ、「検分」を行って駒や室内の照明などを確認しました。

去年、史上初の八大タイトル独占を果たした藤井八冠はこれまで臨んだタイトル戦をいずれも制し、ことしに入っても「王将」、「棋王」、「名人」を相次いで防衛していますが、「叡王戦」では初めて先に「角番」に追い込まれています。

一方、伊藤七段は藤井八冠と同い年で、2020年にプロ棋士となりました。

去年は竜王戦、ことしは棋王戦で藤井八冠に挑戦しましたが、いずれも白星を挙げられずに敗れ、今回初めてのタイトル獲得を目指します。

第4局は31日午前9時に伊藤七段の先手で始まり、夜に勝敗が決まる見通しです。

藤井八冠の師匠 杉本昌隆八段「真価が問われる戦い」

藤井八冠の師匠、杉本昌隆八段は、ここまで1勝2敗と、八冠の維持にあとがない状況で迎える31日の第4局について「追い込まれた藤井八冠がどんな将棋を指すか、真価が問われる戦いだ」と話しています。

杉本八段はここまでの戦いについて、「どの将棋も非常にきわどい勝負でした。第2局・第3局はいずれも終盤のねじりあいでしたが、伊藤七段が、藤井八冠の終盤力に決して引けを取らず、むしろ競り勝っていたような印象を受けました。伊藤さんが非常に充実している状態だと感じました」と振り返りました。

最近の藤井八冠の調子については、「現時点で、今年度の勝敗は5勝3敗で、すべてがタイトル戦という中で、決して悪くない成績です。ただ、今までがあまりにも勝っていたので、勝ち越しでも『調子が悪いのではないか』と思われてしまうかもしれません。今回、追い込まれたことで逆に注目されているのは師匠の私からすると複雑ですが、それくらい藤井八冠の実力を皆さんが認めてくれているのだと思います」と述べました。

今回、先に角番に追い込まれ、八冠の維持にあとがない状況となっていることについては、「同じ相手に2連敗することはほとんどなかったので、かなり珍しい状況です。ただ、実はこの状態はある意味で楽しみなところもあります。藤井八冠は今まで、自分だけが一方的に追い込まれたことがなかったはずなので、そうなった藤井八冠がどんな将棋を指すのか。追い込まれたときの真価が本当に問われています。そういう意味で、次の対局が非常に楽しみです」と話していました。

また、同い年の伊藤七段との関係性について、「感想戦でも2人はすごく楽しそうです。これは年が近いからじゃないかなと思います。勝負を度外視しても、伊藤七段とのタイトル戦は充実しているのだと思います」と述べ、あすの第4局に向けては、「両者、平常心で対戦してほしいです。タイトル戦にかかる重圧は追い込まれた藤井八冠もそうですが、伊藤七段にとっても同じだと思います。あと1勝でタイトルという場面を迎えて今までどおりの指し回しができるか。そこを伊藤七段には期待したいです。藤井八冠は、1局1局、返していくしかないですから、何としてもフルセットに持ち込んでほしいです」と期待していました。

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