高齢者や障害者、DVの被害者などが賃貸住宅の入居を断られるケースはあとを絶たず、特に高齢者については、孤立死に伴う遺品の処分の負担への不安から多くの大家が拒否感を示すなど、住まいの確保が課題となっています。

こうした人たちを支援しようと、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」、いわゆる「住宅セーフティネット法」の改正案が、30日の衆議院本会議で可決・成立しました。

今回の改正で、住まいの確保を促進するための取り組みが制度化され、都道府県から指定された「居住支援法人」などが、入居からその後の安否確認や見守りを行ったり福祉につなげたりする住宅を「居住サポート住宅」として認定します。

また、借り主が「居住支援法人」を活用して家賃の滞納を立て替える保証会社と契約を結びやすくする制度も設けるなど、大家が貸しやすい環境づくりが進められることになります。

国は、来年秋ごろに施行を目指すことにしています。

「居住支援法人」の役割重視 背景には厳しい現実

改正法では「居住支援法人」の役割が重視されていますが、背景には住宅の確保が難しい人たちが置かれている厳しい現実があります。

東京・町田市で1人暮らしをしている三橋勇さん(63)は、長年住んでいたアパートが老朽化で建て替えることになり、去年、立ち退きを求められました。

三橋さんは糖尿病の持病があるため、透析治療で通う病院の近くにあるマンションへの入居を申し込みましたが、契約の際に緊急連絡先を頼める親族などがいなかったこともあり、断られたということです。

こうした中、ケアマネージャーの紹介で「居住支援法人」のサポートを受けるようになったところ、不動産会社が理解を示し部屋探しを始めてから3か月後にこのマンションに引っ越すことができました。

三橋さんは「以前住んでいたところと病院との距離は変わらず、場所がいいので気に入っています。無事に引っ越しできてほっとしたというのが一番で、『居住支援法人』には感謝の気持ちでいっぱいです。今度はできるだけ長くこの部屋に住み続けたいです」と話していました。

専門家 “持続可能な仕組みづくりが重要”

住宅政策に詳しい東京大学の大月敏雄 教授は「今回の法改正で大家が住宅に困っている人に、住まいをより貸し出しやすくなる仕組みになった」と評価しています。

一方で「『居住支援法人』に相応の対価を支払う体制が十分に整っていない。法人の運営を支援するメニューを強化していくことも必要だ」と述べ、持続可能な仕組みづくりが重要だと指摘しています。

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