演技指導などを装い女性俳優にわいせつな行為をしたとして、準強姦の罪に問われた映画監督の榊英雄(さかき・ひでお)被告(53)の初公判が29日、東京地裁で行われた。榊被告は認否を留保した。  起訴状によると2015年3月19日、東京都内のマンションの一室で、演技指導の名目で当時20代の女性にわいせつな行為をしたとされる。

◆俳優や制作スタッフ、立場が不安定な「フリーランス」多く

 映画業界などでは、監督らから性被害を受けたとする声が少なくない。芸能・芸術関係者らでつくる「日本芸能従事者協会」代表理事で俳優の森崎めぐみさんは「演技指導や打ち合わせといった名目で、個別に呼び出されて被害に遭うケースが目立つ」と話す。  協会が2022年にインターネットで実施した調査では、回答した俳優や映画制作スタッフら約400人のうち7割が、セクハラ被害を受けたり見聞きしたりしたと回答した。うち46人は「レイプされた」と答え、ハラスメントの域を超えた深刻な被害の一端が明らかになった。  誰から被害を受けたかの問いには「監督、演出家、スタッフ」が6割を占めた。「異性の演出家から個人レッスンと称して呼び出され、台本の内容と無関係に体を触られた」「映画監督と飲みに行った後、ホテルに連れて行かれた」などの声が寄せられた。  背景には、俳優や制作スタッフの多くがフリーランスで働いている実態があるという。森崎さんは「キャスティングを含めて仕事を差配する権限がある監督やプロデューサーらの誘いを断ると、仕事を失うリスクがある。不安定な雇用環境が、被害が起きる温床になっている」と指摘する。  対策として、制作者と俳優らが雇用契約を結ぶ際、制作者側にセクハラ対策を義務づけることに加え、相談窓口の強化や第三者による調査機関の設置が必要としている。(中山岳) 

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