JR東海が開業を目指すリニア中央新幹線のルートに予定されている南アルプス市の住民は、開業すれば生活環境が悪化するとして、5年前の2019年、JR東海に対して、市内のおよそ5キロの区間の工事の差し止めと、損害賠償を求める訴えを起こしました。

28日の判決で、甲府地方裁判所の新田和憲裁判長は「リニア中央新幹線の事業や工事には高度な公共性、公益性が存在すると認められる」と指摘しました。

そのうえで、新田裁判長は「原告らが受けると主張する騒音や振動などの被害は、いずれも工事自体を差し止めるほどの違法性は認められず、用地の取得などでも違法な権利侵害があったとは認められない。原告らの請求には理由がない」として、原告側の訴えを退けました。

原告団代表「沿線住民を無視した判決 誠に残念」

判決を受けて、原告団の志村一郎代表は「沿線住民を無視したこの判決は誠に残念です。弁護士と原告団で相談をして、しかるべき対応をしたいと思います」と話していました。

JR東海「早期の開業目指し全力で取り組む」

JR東海は「裁判所において適切にご判断いただいたものと理解している。引き続き、工事の安全、環境の保全、地域との連携を重視し、早期の開業を目指して全力で取り組んでいく」とコメントしています。

リニア中央新幹線めぐり 各地で裁判

リニア中央新幹線をめぐっては、各地で裁判が起こされています。

8年前、2016年には、山梨や東京など1都6県の沿線の住民など700人余りが「安全性などの問題や環境に悪影響を与えるおそれがある」などと主張して、国が行った計画の認可を取り消すよう、東京地方裁判所に提訴しました。
去年7月の判決で、東京地裁は「国の判断が社会一般の常識に照らして著しく妥当性を欠くとまでは言えず、違法ではない」と指摘して、訴えを退けました。
原告側は判決を不服として控訴し、2審での審理が続いています。

4年前の2020年には、川の水量が減り生活や仕事を奪われるおそれがあるとして、静岡県内の農家や住民がJR東海に工事の差し止めを求める訴えを静岡地方裁判所に起こし、今も審理が続けられています。

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