◆ネットバンキングの不正送金手助け疑いで男3人逮捕

 他人名義の口座のインターネットバンキングを使った不正送金を手助けしたとして、警視庁サイバー犯罪対策課は23日、電子計算機使用詐欺(ほう助)の疑いで、福島県白河市、派遣社員阿部雄哉容疑者(36)ら男3人を逮捕したと発表した。  逮捕は21日付。他に逮捕されたのは同県矢吹町、アルバイト山田政克(27)、川崎市宮前区、無職黒沢吉信(34)の両容疑者。  逮捕容疑では、阿部容疑者は昨年9月13日、不正アクセスを受けて出入金停止中だった60代男性名義の銀行口座について、不正取得した個人情報で本人に成り済まして銀行に電話し、停止を解除。氏名不詳の指示役が男性名義の口座から別口座へ計1996万円を、インターネットバンキングで不正に送金するのを助けたとされる。山田、黒沢両容疑者は、阿部容疑者が使う携帯電話を用意したとされる。  いずれも容疑を認め「ギャンブルで金がなく、生活費がほしかった」と供述。指示役から数千~数万円の報酬を受け取ったという。  男性の口座には昨年9月3日以降、複数回の不審なアクセスがあり、銀行側が出入金を止めた。男性は「以前、銀行名で届いたメールに返信した」と話し、個人情報を盗むフィッシングメール詐欺に遭った可能性がある。不正送金先の口座からは、中国人名義など複数の口座に送金されており、同課が金の流れを調べている。   ◇

◆被害の6割が40〜60代の個人

 インターネットバンキングでの不正送金は警察庁によると、2023年の全国の被害額が87億3000万円で、前年の5.7倍に上った。被害件数も4.9倍の5578件と、いずれも過去最悪となった。  被害のほとんどが個人で40〜60代が6割を占めた。不正送金額の半分は、追跡しにくい暗号資産交換業者の口座に送られ、発覚を逃れる狙いがうかがえる。  被害増加の背景には、ネットバンキング利用の増加のほか、個人情報を盗み取る「フィッシング」の急増があるとみられる。  フィッシングは金融機関や企業、官公庁を装ったメールやショートメッセージ(SMS)を送り付けて偽サイトに誘導し、IDやパスワード、クレジットカード番号などを入力させ、個人情報を盗む。フィッシング対策協議会(東京)の統計で、23年の報告件数は前年比2割増の約119万6000件で過去最多。約5万5000件だった19年の21倍に増えた。  警察庁の担当者は「偽サイトは巧妙に作られ、だまされやすい。突然送られてきたメールやSMSのリンクを開かず、正規のサイトからログインしてほしい」と注意を呼びかけている。(小倉貞俊) 

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