リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が近くで進む、岐阜県瑞浪市の大湫(おおくて)地区で井戸やため池などの水位低下が確認された問題で、JR東海は20日夜、トンネル工事を「ただちに中断する」方針を明らかにした。地質の状況を調べるボーリング調査を6月から始め、調査後に、掘削工事の再開を検討する。地元の瑞浪市長が工事の即時中止をJR側に求めていた。

 JR東海の丹羽俊介社長は16日の会見で、トンネル掘削工事を一時中断し、ボーリング調査をする方針を示していた。ただ、住民が暮らす集落の手前まで掘り進めるのが前提で、瑞浪市の水野光二市長は17日、「工事をいったん止め、原因の分析と究明を早急に行うとともに、必要な対策を」と、JR側に工事の即時中止を要求。岐阜県の古田肇知事は問題発覚後、「地元住民の十分な理解を得つつ、必要な対策を早急に進めてほしい」などとコメントしていた。

 JR東海の広報部は、トンネル工事の即時中断を決めたことについて「大湫町の皆様のご不安と、岐阜県および瑞浪市からの要請を踏まえた」としている。同社によると、トンネル工事は設備不具による機器点検のために17日から止めているが、掘削作業を再開しないことを決めたという。

 JR東海は、大湫地区の井戸やため池など14カ所で水位の低下を確認。トンネル工事による湧水の影響とみており、井戸水を上水道に切り替える工事をするなどの対応のほか、住民らへの補償交渉を進めている。20日、代替水源となる井戸を設置する工事を始めたと発表。同日、トンネル工事に伴う湧水を減らすための薬液注入を始めたことも明らかにした。(米田怜央)

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