大分県宇佐市安心院町の民家で2020年2月、親子が殺害されて現金が奪われた事件で、強盗殺人と住居侵入の罪に問われた大分市の会社員、佐藤翔一被告(39)の裁判員裁判の初公判が20日、大分地裁(辛島靖崇裁判長)であった。佐藤被告は「読み上げられた内容は僕はすべてやっていません。僕は犯人ではありません」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。

 起訴状によると、佐藤被告は同年2月2日、安心院町の民家に侵入し、農業山名高子さん(当時79)と長男の郵便配達員博之さん(同51)の首などを包丁やはさみで刺すなどして殺害し、現金約8万8千円を奪ったとされる。

 事件から4年3カ月を経て、初公判を迎えた事件。裁判官、検察官、弁護人が事前に争点などを確認し合う「公判前整理手続き」は今月16日までに計21回開かれた。主な争点は①佐藤被告が犯人かどうか②事件で現金が奪われたかどうか③佐藤被告が犯人だと認定できる場合に科すべき刑罰――の三つ。

 検察側は冒頭陳述で、「被告は家族に内緒にしていた消費者金融の借金返済に困り窃盗に入ろうと考えた。被害者宅に侵入後、山名さんらと出くわしたことから2人を殺害して金品を奪った」と指摘。被告が「事件の2日前にプロレスマスクをした男から謝礼と引き換えに動画撮影の協力や運動靴の購入を頼まれ、事件当日は血の付いた服や靴などの処分を依頼された」などと供述した点について、検察側は「信用できない」と主張した。

 一方、弁護側は「公訴事実記載の事実については存在しない。被告は被害者方に侵入していないし、殺害もしていない」と反論し、「(佐藤被告は)事件当時、複数の覆面の第三者と一部行動を共にしている。この複数の第三者が真犯人だと思う」などと無罪を訴えた。また、裁判員に対して「検察側の冒頭陳述を聞いた後だが、先入観を捨てて臨んでほしい」と語りかけた。

 事件は20年2月3日朝に発覚。博之さんの同僚から連絡を受けた近所の人が、山名さん宅のカーテンに血が付いているのを見つけて通報した。警察官が2人の遺体を発見し、県警は同5日に捜査本部を設置。佐藤被告を21年10月に強盗殺人容疑で逮捕した。

 公判は計13回開かれる予定で、6月17日に結審、7月2日に判決が言い渡される予定。(大村久)

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