死刑の執行を当日に死刑囚に伝える運用は憲法に違反するとして、死刑囚2人が当日告知を受け入れる義務がないことの確認や慰謝料を国に求めた訴訟の判決で、大阪地裁(横田典子裁判長)は15日、死刑囚側の請求をいずれも退けた。

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 訴訟で原告側は、執行2日前に告知を受けた死刑囚が姉らとやり取りする音声などを収めた約70年前の録音テープを証拠として提出。過去には事前に告知していたと指摘し、家族と最後の面会をさせず、不服申し立ての制度を使う猶予も与えない今の運用は「適正な手続きによらなければ刑罰を科されない」と定めた憲法31条に反すると訴えた。

 また国連の人権機関が「適切な時に処刑日時を知らせないことは虐待」との意見を出していることを挙げ、「事前告知は死刑存置国の標準だ」とも強調。当日告知では死を受け入れる時間がなく、「憲法13条が保障する人間の尊厳を侵害している」とも主張した。

 一方の国側は、そもそも告知について定めた法令がなく、憲法は死刑囚に事前告知を求める権利を保障していないと反論。前日に告知された死刑囚が自殺した事案があったため、当日告知に改めたと説明し、「現在の運用は円滑な執行や自殺リスクを避けるための合理的な方法だ」と請求を退けるよう求めていた。

 大阪地裁では、「絞首刑の残虐性」「再審請求中の執行の是非」を問う訴訟を含め、死刑の運用をめぐる三つの訴訟が並行して進んでおり、執行の告知が初の司法判断となった。(山本逸生)

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