川崎市が復元工事を進めていた飛鳥時代(7世紀後半)の倉庫が完成し、この倉庫を含めた橘樹(たちばな)歴史公園(同市高津区千年)のオープン記念式典が18日、現地で開かれた。市教育委員会によると、飛鳥時代の倉庫復元は全国初。(小田克也)

橘樹歴史公園のオープンを祝い、復元された飛鳥時代の倉庫のそばで上演された雅楽「賀殿」

 公園がある橘樹官衙(かんが)遺跡群は、高津区千年と宮前区野川本町にまたがる。7~10世紀の官衙(官庁・役所)の実態を知る上で重要とされ、2015年に国史跡に指定された。  市教委によると、発掘調査で飛鳥時代の倉庫4棟の跡が見つかった。古代武蔵国の橘樹郡(現在の川崎市とほぼ同じ範囲)で集めた稲を倉庫に保管し、武蔵国の国府(現在の東京都府中市)に運んだと推測される。  4棟のうち1棟は、高床式倉庫の建物全体が復元された。高さ約9メートル、縦横6メートル。屋根は茅葺(かやぶき)き、側面に扉がある。文献資料や奈良時代の倉庫を参考に設計された。外壁が平面になる「板校倉(あぜくら)造」が採用されているのが特徴。他の3棟は、床を支える柱の一部を復元。3カ所それぞれに16本の柱が碁盤の目のように並んでいる。

橘樹歴史公園のオープン記念式典に古代の服装で登壇した福田紀彦川崎市長

 公園は、利用者に古代に思いをはせてもらおうと整備された。広さ約3000平方メートル。芝生が敷かれ、園路が設けられてベンチが置かれた。今後は職員立ち会いの下、倉庫内を見学できる機会を設ける。  式典では、郡の長官「橘樹郡司」に扮した古代衣装姿の福田紀彦市長が「昔の市役所であり、川崎のルーツとなる場所が守られてきた。大切にしていかなければ」とあいさつ。倉庫に鍵を掛ける儀式風のセレモニーのほか、建物新築の際に用いられる雅楽「賀殿(かてん)」が倉庫前の特設舞台で上演された。市民ら200人以上も参加し、小学5年生の娘と母親と来た近所の女性(48)は「すごく立派な建物。びっくりした」と驚いていた。 

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